ID番号 | : | 05673 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 伸栄製機事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 業務に従事中に交通事故をこうむった労働者が、使用者を相手取って損害賠償を請求したケースで、使用者の災害補償と第三者からの損害賠償(慰謝料)と調整されるか否かが争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法75条 労働基準法76条 労働基準法84条2項 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 損害賠償等との関係 / 慰謝料 労災補償・労災保険 / 補償内容・保険給付 / 療養補償(給付) 労災補償・労災保険 / 補償内容・保険給付 / 休業補償(給付) |
裁判年月日 | : | 1966年12月1日 |
裁判所名 | : | 最高一小 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和38年 (オ) 1035 |
裁判結果 | : | 一部棄却,一部破棄・差戻 |
出典 | : | 民集20巻10号2017頁/時報470号58頁/タイムズ202号117頁/裁判所時報463号2頁/裁判集民85号 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 窪田隼人・判例評論101号30頁/高津環・法曹時報19巻3号144頁/石川吉右衛門・法学協会雑誌84巻12号1703頁/林迪広・民商法雑誌56巻6号1003頁 |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-損害賠償等との関係-慰謝料〕 つぎに論旨は、原判決が被上告人とAとの間に成立した前記示談ならびに調停に基づき被上告人が梅村から受領した二三、〇〇〇円を本訴請求金額より控除しなかつたのは違法であると主張する。しかし、右のうち一〇、〇〇〇円の示談金については、上告人自からも、Aには本件交通事故につき過失がないことが判つたので瑞穂警察署長立会のうえAから被上告人に見舞金として贈られたものである旨を主張しているのであるから、右金員が本訴請求金額から控除さるべきものでないことは明らかである。また、所論調停の結果Aから被上告人に交付されたとする二三、〇〇〇円については、上告人において原審でなんら主張していないことであるのみならず、この点について被上告人が昭和簡易裁判所の調停の結果Aから一五、〇〇〇円(記録上一三、〇〇〇円の誤りと認められる。)の交付を受けた旨陳述しているけれども、記録によれば、それは慰藉料として受領した趣旨であることが認められるから、原審において、本件災害補償金から右慰藉料額を控除することなく上告人に支払を命じたことは正当である。けだし、労働者に対する災害補償は、労働者のこうむつた財産上の損害の填補のためにのみなされるのであって、精神的損害の填補の目的をも含むものではないから、加害者たる第三者が支払つた慰藉料が使用者の支払うべき災害補償の額に影響を及ぼさないからである。 〔労災補償・労災保険-補償内容・保険給付-療養補償(給付)〕 労働基準法七五条に基づく療養補償を使用者が行なうべき時期については、同法に別段の規定はないが、同条の趣旨からいつて、療養補償の事由が発生すれば遅滞なく補償を行なうべきものと解され、そして、労働基準法施行規則三九条によれば、療養補償は毎月一回以上行なうべき旨規定されているから、使用者の右補償債務は、少なくとも、当該補償の事由の生じた月の末日にその履行期が到来し、同日の経過とともに履行遅滞に陥るものと解するのが相当である。 〔労災補償・労災保険-補償内容・保険給付-休業補償(給付)〕 労働基準法七六条に基づく休業補償の履行期についても、同法に別段の規定はないが、この種の補償の性質上、通常の賃金支払日に補償金の支払を行なうべきものと解され、そして、労働基準法施行規則三九条によれば、休業補償もまた毎月一回以上行なうべき旨規定されているから、使用者の右補償債務は、少なくとも、当該休業期間の属する月の末日の経過とともに遅滞に陥るものと解するのが相当である。 |