全 情 報

ID番号 05675
事件名 災害補償金請求事件
いわゆる事件名 佐藤工業所事件
争点
事案概要  自動車の前輪左スプリングの取替作業中にジャッキがはずれて下半身神経マヒ等の負傷をした従業員が、使用者を相手として休業補償費、療養補償費を請求した事例。
参照法条 労働基準法施行規則36条5号
労働基準法施行規則47条1項
労働基準法77条
体系項目 労災補償・労災保険 / 補償内容・保険給付 / 療養補償(給付)
労災補償・労災保険 / 補償内容・保険給付 / 障害補償(給付)
裁判年月日 1967年9月29日
裁判所名 仙台地
裁判形式 判決
事件番号 昭和41年 (ワ) 29 
裁判結果 一部認容,一部棄却
出典 労働民例集18巻5号962頁
審級関係
評釈論文 手塚和彰・ジュリスト416号137頁
判決理由 〔労災補償・労災保険-補償内容・保険給付-療養補償(給付)〕
 原告は前記傷害による脊髄損傷のため略第一二胸髄神経以下知覚運動完全脱出し、大小便失禁し、両下肢切断以上の廃疾となり事故当日より昭和四二年五月三一日現在も尚引続き寝たきりの状態で入院加療を受けているものであるところ、事故当日の昭和四〇年五月三日から昭和四一年三月一四日まで名取郡岩沼町のA病院に入院してその間の加療費金二五六、二九三円を要し、引続き同日から仙台市B労災病院に入院して昭和四二年五月三一日現在まで加療費金二八三、九八八円を要し、その間原告の病状は付添看護を絶対に必要とするため原告の母が受傷以来右同日現在も尚付添つてその看護に当つており、その費用は若し付添人を雇つたとすれば一日の日当は少くとも金五〇〇円を下るものでなく同日現在まで七五九日分合計金三七九、五〇〇円を要すること(労働基準法施行規則第三六条第五号に看護料が療養の範囲として規定されている趣旨に鑑みるとき原告は現実にその費用を支出しないで事足つて来たのではあるが前記証拠によればそれは原告方においてこれを支払う資力がなかつたので已むなく原告の母が看護に当つて来たことが明らかに認められるので、かゝる場合原告は付添人を雇つたとすれば当然に支払われるべき前記金額を看護料として請求しうるものと解するのが相当である)、尚病状が重篤で治療上長期に亘つて体力を維持するための栄養補給と補食を必須とし、この費用は平均して一日に金一〇〇円を下らず右同日現在まで合計金七五、九〇〇円を要したことをそれぞれ認定することができ他に右認定を覆すに足る証拠はない。だとすると療養補償の額は右同日現在で以上合計金九九五、六八一円を下るものでないことが明らかであるところ、成立に争いない乙第四号証の記載に被告Y1の一部供述(前記措信しない部分を除く)及び当事者弁論の全趣旨を総合すればこのうち原告は金四六、三〇〇円の医療費を被告Y1から受取つていることが認められるので、これを差引き同被告が右同日現在で原告に対し支払うべき療養補償の額は合計金九四九、三八一円となることが明らかである。
〔労災補償・労災保険-補償内容・保険給付-障害補償(給付)〕
 前記認定の原告の身体障害の程度は労働基準法施行規則別表二の身体障害等級表第一級九、両下肢の用を全廃したものに該当するものと認められるので、同法第七七条に則りその額を算定すれば金六四三、二〇〇円となることが明らかである。ところで同法施行規則第四七条第一項によれば使用者は障害の等級が決定した日から七日以内に障害補償を行うべき旨を定めているのであるが、裁判上これを訴求するときは右にいう「決定の日」は障害等級決定の重大性と困難性並に事柄の性質上これを客観的に確定する必要があることに鑑み判決宣告の日と解するのが相当である。