ID番号 | : | 05681 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | わかさ建設共同企業体事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 仮設足場の取り外し作業に従事中に上から落ちてきた角材にあたって負傷した労働者が、「A建設共同企業体」なる名称のもとで民法上の組合を結成しその企業体の名で建設工事を請け負っていた請負業者に対して、損害賠償を請求した事例。 |
参照法条 | : | 民法709条 民法715条 民法44条 労働者災害補償保険法16条 労働者災害補償保険法20条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任 労災補償・労災保険 / 損害賠償等との関係 / 労災保険と損害賠償 |
裁判年月日 | : | 1973年6月28日 |
裁判所名 | : | 鹿児島地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和46年 (ワ) 430 昭和47年 (ワ) 55 |
裁判結果 | : | 一部認容,一部棄却(確定) |
出典 | : | 時報720号86頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕 A会社は被告らを組合員とする民法上の組合であり、代表者の定めはあったが、組合の業務である会館建設工事の執行権は組合員である各被告が有していたものであり、被告X会社代表者BはA会社の会館建設工事現場監督の職にあったのであるから、右Bの過失に因る不法行為である本件事故については、民法第四四条の類推適用によってA会社がその損害賠償債務を負い、かつ右損害賠償債務は、前記二認定の組合契約の(1)、(6)の約定によって、民法第六七五条の規定にかかわらず、組合員である被告らのいわゆる不真正連帯債務であると解するのが相当である。 また、前記三認定事実によると、本件事故は、Cが落下した角材のライトゲージとボルトとの間への食い込みを外すに当って、食い込みが外れた場合に落下を防止できるような適当な方法をとらなかった(栂角材はその一角をC型鋼の開口部に挿入するという比較的不安定な状態にあり、かつ天井の鉄骨骨組のうち、南北の方向に通じているものは、栂角材の長さとほぼ同じである約四メートルの間隔をおいたサブトラスのみであるから、東西の方向に通じている仮設足場の栂角材がC型鋼の開口部から外れた場合には、その落下を防ぐものがない状態にあった。これに対し、Cが先に取外し作業をした南北の方向に通じている仮設足場の場合には、ライトゲージが約八〇センチメートルの間隔で東西の方向に通じているから、長さ約四メートルの角材、長さ約一・八メートルのパネル板は固定された状態を解かれても、直ちに落下する危険は少い状態にあったといえる)過失に因って発生したもので、CはA会社の民法第七一五条にいう被用者として(雇傭契約上は被告Y会社の被傭者であったが)その業務を執行していたものであるから、A会社はCの使用者として、Cの過失に因る不法行為である本件事故について損害賠償債務を負い、右債務は前記のとおりA会社の組合員である被告らのいわゆる不真性連帯債務であると解するのが相当である。 〔労災補償・労災保険-損害賠償等との関係-労災保険と損害賠償〕 (1) Dについて、その逸失利益の現価七、四二二、〇八〇円のうち、同人の過失を斟酌して(過失相殺をして)、その六割である四、四五三、二四八円の限度においてその損害賠償請求権が発生し、これを各原告がその法定相続分である三分の一に当る一、四八四、四一六円宛相続し、各原告が労災保険によって給付を受ける遺族補償年金が全額右の各原告が相続した損害賠償請求権の弁済にそれぞれ充てられるものとすることは、労災保険による保険給付が単に業務上の災害に基く損害賠償を目的とするものではないのは勿論、損害の填補のみを目的とするものでもなく、労働者またはその遺族の生活保障をも目的としているものであると考えられることに照らすと、相当でなく採用できない見解である。 (2) 各原告が給付を受ける遺族補償年金を一括し、その合計額がDの逸失利益の填補に充てられるものとして前記の逸失利益の現価から給付される年金の現価の合計額を控除し、さらにその残額についてDの過失を斟酌して減額した額の損害賠償請求権がDについて生じ、これを各原告が法定相続分にしたがって相続するものとすることも、労災保険の遺族補償年金が、遺族を団体的なものとみて、これに対して給付されるというものではなく、遺族である各個人に給付されるものとされている労災法の建前と矛盾すること、および遺族がすべて終始生計を共にし、また利害相反することがないとはいい得ないことに照らすと、相当でなく採用できない見解である。 |