ID番号 | : | 05687 |
事件名 | : | 裁決取消等請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 池田労働基準監督署長事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 労災保険法の障害補償の障害等級の認定に関し、同一部位に同一の病理的原因による一三級以上に該当する身体障害が複数ある場合に、障害等級の繰上げをするかどうかが争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働者災害補償保険法施行規則14条 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 補償内容・保険給付 / 障害補償(給付) |
裁判年月日 | : | 1977年7月19日 |
裁判所名 | : | 高松高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和50年 (行コ) 8 |
裁判結果 | : | 認容(確定) |
出典 | : | 訟務月報23巻7号1291頁 |
審級関係 | : | 一審/徳島地/昭50. 6.13/昭和48年(行ウ)9号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-補償内容・保険給付-障害補償(給付)〕 被災労働者に複数の身体障害が残つた場合について施行規則一四条二項及び三項は、前記のとおり取り扱いを異にする二個の規定を併列的に規定しているところであるが、同条二項が別表に掲げる二以上の身体障害が併存する場合には重い方の身体障害の該当する障害等級によると定めながら、同条三項において、第一三級以上に該当する身体障害が二以上あるときは繰り上げた障害等級によると定めたのは、複数の身体障害が第一三級以上に達するにもかかわらず、同条二項が適用されて重い方の障害等級によることにすると、多くの場合補償として不十分であることを理由とするものと考えられる。したがつて、右の趣旨からすれば、同条三項は、別表に掲げた第一三級以上に該当する二以上の身体障害が併存する場合に、重い方の障害等級による補償によつて当然他方の障害の補償も十分なされているものとみなし得る等の特段の合理的理由がある場合を除き、原則として同項各号のとおり繰り上げた等級をもつて障害等級とすることを明らかにしたものであり、その余の場合に同条二項が適用されるものと解するのが相当である。 被控訴人は、同一部位に同一の病理的原因による身体障害が複数ある場合には残存する全ての身体障害を考慮に入れた上で最も重い障害等級を認定すれば残存する他の身体障害に対する補償もまかなわれたと評価することでき、適正、公平な結果が得られるから、施行規則一四条二項を適用して重い方の等級をその身体障害の障害等級とすべきである旨主張する。成る程同一部位に同一の病理的原因による身体障害が複数ある場合に、その最も重い障害等級による補償をすれば当然その余の障害の補償をも十分になされていると評価し得る場合のあることは理解し得ないでもないが、被控訴人が主張するように同一部位に同一の病理的原因による身体障害が複数ある場合にはすべて同条二項を適用すべきであるとの見解には直ちに賛同することができない。 そこでこれを本件につき見るに、控訴人の身体障害は視力障害が第九級第一号、視野障害が第九級第三号にそれぞれ該当することは前記認定のとおりであり、被控訴人は、同一眼球の機能的障害は通常その二以上が同時に現われるものであり、また、右機能的障害はもともと物体を見る能力の障害としては一個の身体障害が存在しているのにすぎない旨主張するけれども、同一眼球の機能的障害である視力障害、運動障害、調節機能障害、視野障害は、視神経の障碍に起因する場合には複数の障害として現われるのが通常であるが、網膜の中心部分の障碍に起因する場合には視力障害はあつても必ずしもそれ以外の機能的障害である運動障害、調節機能障害、視野障害が現われるとは限らないことは被控訴人の自認するところであり、右各機能障害は必ずしも同一又は相関連して生ずる障害とみることはできないし、また、視力、眼球の運動や調節、視野は、日常の労働においてはそれぞれが独立して重要な機能を営んでいるものというべきであるから、眼球の一つの機能的障害について、補償をすれば当然その余の機能的障害についても補償がなされていると評価し得べき特段の合理的理由があるということはできない。 したがつて、別表〔略〕に掲げる第一三級以上に該当する身体障害が二以上併存するにもかかわらず前記の如き特段の合理的理由がないのに施行規則一四条三項に定めた併合繰り上げを行わない同条二項によりその重い方の障害等級を認定した被控訴人の本件処分は違法である。 |