ID番号 | : | 05688 |
事件名 | : | 国家賠償請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 来民郵便局事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 郵便局職員が局主催のレクリエーシヨン行事会場から自家用車で表彰式場に向う途中で発生した交通事故に関して公務災害でなく私傷病として定期昇給につき査定をしたことについて国に対して損害賠償が請求された事例。 |
参照法条 | : | 国家公務員災害補償法1条 国家賠償法1条 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 会社行事(宴会、運動会、棟上げ式等) 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償 |
裁判年月日 | : | 1978年5月30日 |
裁判所名 | : | 福岡高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和51年 (ネ) 279 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 時報928号69頁/タイムズ373号121頁/労働判例301号40頁/訟務月報24巻7号1409頁 |
審級関係 | : | 上告審/最高二小/昭54. 7.16/昭和53年(オ)1011号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕 よつて、熊本郵政局長が控訴人に対し、違法な本件公務外災害認定をなし、これに拘束せられた来民郵便局長をして違法な本件定期昇給処分をなさしめたことは、国の公権力の行使に当る公務員たる熊本郵政局長がその職務を行うについて過失によつて違法に控訴人の利益を侵害し同人に損害を加えたときに該当するから、被控訴人国は控訴人に対し違法な本件公務外災害認定に基づく違法な本件定期昇給処分により控訴人の蒙つた損害を賠償すべき責任がある。」 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-会社行事(宴会、運動会、棟上げ式等)〕 そもそも、所属官署の長が法律、規則、通達等の命ずるところに従つて組織的、計画的に実施するレクリエーシヨン行事に、職員が参加する行為は本来の公務ということはできないけれども、右レクリエーシヨン行事は職員の健全な文化、教養、体育等の活動を通じて、その元気を回復し、及び相互の緊密度を高め、並びに勤務能率の発揮及び増進に資することを目的として行われるものであり、職員の研修等とともに公務達成の手段となるのであつて、職員のレクリエーシヨン行事参加中は、右目的遂行のため所属官署の長の強い支配管理が及ぶ場合が多いものであるから、行事参加中に発生した職員の災害については、原則として公務と相当因果関係があるものとして、公務上の災害と認定するのを相当と解すべきである。 しかしながら、本件災害は、控訴人が第一会場でのボーリング競技会終了後、第二会場での入賞者表彰式及びその後の懇親会に参加するため来民局へ向け自己の自家用自動車を運転走行中、来民局先国道上で対向車との衝突により発生した交通事故によるものであるから、本件レク行事の中断中に発生した災害であり、右運転行為に来民局長の支配管理が及んでいたものとはいえないのであつて、本件災害は本件レク行事参加中の災害ということはできない。 もつとも、来民局長はAボーリングセンターにおけるボーリング競技会終了後参加者全員に対し入賞者表彰式と懇親会のため第二会場である来民局へ急いで帰局するようにとの発言をしたものであるが、本来の公務そのものではなく、また参加を強制できないレクリエーシヨン行事の性格からして、右発言はそもそも職務命令に親しまないものであるから、これをもつて控訴人主張のように国家公務員法九八条一項、郵政省就業規則五条二項に基づき発せられた帰局命令と解することはとうていできない。 |