ID番号 | : | 05692 |
事件名 | : | 損害賠償等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 財部町役場事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 地方公共団体の長が特別昇給、昇格、主任任命等を定めた労使間協定を法律に違反するとして破棄し実施しなかったことにつき、職員が損害賠償を請求した事例。 |
参照法条 | : | 地方公務員法55条9項 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額 |
裁判年月日 | : | 1981年3月23日 |
裁判所名 | : | 鹿児島地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和54年 (ワ) 7 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 訟務月報27巻7号1280頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 斎藤信行・地方公務員月報217号79頁/有本恒夫・昭和56年行政関係判例解説270頁 |
判決理由 | : | 〔賃金-賃金請求権と考課査定・昇給昇格・賃金の減額〕 給与条例五条四項は特別昇給発令の要件として「職員の勤務成績が特に良好である」ことを掲げており、同条例の施行規則である昇格規則三四条及び三六条はその具体的要件を規定している。 原告らは法律上の主張3において、右規則各条が期間短縮の方法による特別昇給に関する規定であり、しかも例示規定に過ぎないと主張する。しかし給与条例五条三項は通常の昇給発令の要件として「職員が現に受けている号給を受けるに至つた時から、一二月を下らない期間を良好な成績で勤務した」ことを掲げているのであつて、通常の昇給より有利な特別昇給はその性格上もともと期間短縮の方法によらざるを得ないものである。また昇格規則三四条及び三六条が単なる例示規定に過ぎないものとは解し得ない。よつて原告らの右主張は採用することができない。 そうすると本件協定の第三は、給与条例五条四項、昇格規則三四条、三六条所定の要件の有無にかかわらず、月数の経過のみによつて特別昇給を行なうことを定めている点で、右条例及び規則に抵触し、無効と判断される。 原告らの法律上の主張1は、給与条例五条四項に定める特別昇給の要件は、情実人事ないし不当労働行為の危険のない本件協定を禁止するものではないというが、同条例及び法規中にかかる解釈を導き出す根拠は全く見当たらず、これを採用することはできない。 原告らの法律上の主張2は、本件協定により町長が給与条例五条四項に定める「勤務成績が特に良好である」と認定したというが、本件協定は該当職員の氏名を特定・固定せず、単に一定の等級・号給の者が一定の在級月数を経過することにより、無条件で特別昇給を行なうことを定めたもので、到底、右条例の定める要件である具体的な勤務成績を認定したものとは解されず、右主張も採用できない。〔中略〕 給与条例五条一項は、職員の昇格について、「昇格させようとする職務の等級の定数に欠員があり、これを補充しようとする場合であつて、且つ昇格させようとする職務の等級に適すると認められる場合に限るものとする」と定めている。また同条例四条二項の授権により、昇格規則三条及び同規則別表一は等級別の標準職務を、同規則四条、五条及び同規則別表二は等級別資格基準をそれぞれ定めている。本件協定の第二、第四は、個々の職員の適性如何にかかわらず、単に一定の等級・号給の者が一定の在級月数を経過することにより無条件で昇格させることを定めたもので、給与条例四条二項、五条一項、昇格規則三条ないし五条に抵触し、無効と判断される。 |