ID番号 | : | 05694 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 東都観光バス事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 観光バスの運転を業とする会社の従業員の同一会社の従業員に対する交通事故に関連して行なわれた使用者に対する損害賠償請求事件で、被害者に支給されていた障害補償一時金および休業補償と慰謝料との調整が争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法84条2項 労働者災害補償保険法14条 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 損害賠償等との関係 / 労災保険と損害賠償 |
裁判年月日 | : | 1983年4月19日 |
裁判所名 | : | 最高三小 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和55年 (オ) 82 |
裁判結果 | : | 破棄・差戻 |
出典 | : | 民集37巻3号321頁/時報1078号78頁/タイムズ497号89頁/交通民集16巻6号1779頁/金融商事682号45頁/裁判所時報864号1頁/労経速報1162号3頁/労働判例413号67頁 |
審級関係 | : | 控訴審/東京高/昭54.10.25/昭和52年(ネ)2958号 |
評釈論文 | : | 安枝英のぶ・季刊実務民事法4号232頁/伊藤瑩子・ジュリスト796号62頁/伊藤瑩子・季刊実務民事法4号198頁/桑原昌宏・昭和58年度重要判例解説〔ジュリスト815号〕210頁/香川孝三・ジュリスト833号115頁/能見善久・法学協会雑誌101巻11号1847頁 |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-損害賠償等との関係-労災保険と損害賠償〕 労働者に対する災害補償は、労働者の被つた財産上の損害の填補のためにのみされるものであつて、精神上の損害の填補の目的をも含むものではないから(最高裁昭和三五年(オ)第三八一号同三七年四月二六日第一小法廷判決・民集一六巻四号九七五頁、同昭和三八年(オ)第一〇三五号同四一年一二月一日第一小法廷判決・民集二〇巻一〇号二〇一七頁参照)、前記上告人が受領した労災保険による障害補償一時金及び休業補償金のごときは上告人の財産上の損害の賠償請求権にのみ充てられるべき筋合のものであつて、上告人の慰藉料請求権には及ばないものというべきであり、従つて上告人が右各補償金を受領したからといつてその全部ないし一部を上告人の被つた精神上の損害を填補すべきものとして認められた慰藉料から控除することは許されないというべきである。 更に、原判決は、前記上告人が受領したその余の費目の金額についてもその一部又は全部を前記慰藉料額から控除しているが、右は費目の名称からみて上告人に生じた損害を填補するものかどうか、またいかなる性質の損害を填補するものかにつき疑問があり、原判決の説示する理由だけではこれらを控除する理由が明らかであるとはいえない。 そうすると、過失相殺により減じたのちの上告人の慰藉料として肯認された一六〇万円から上告人が受領した前記労災保険による障害補償一時金の金額一四万〇一〇〇円及び休業補償金三三万九六〇〇円の二割相当額を控除して、上告人の本訴請求を一部排斥した原判決には、労働災害による損害賠償に関する法令の解釈適用を誤つた違法があり、かつ、他に十分な理由を付さずして、前記慰藉料額から前記その余の費目の金額の一部又は全部を控除して上告人の請求を一部排斥した原判決には、審理不尽、理由不備の違法があるというべきであり、その違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。 |