ID番号 | : | 05699 |
事件名 | : | 処分取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 地公災基金埼玉県支部長(越谷市蒲生保育所)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 保育所の保母の腰痛症、頚肩腕症候群につき公務災害でないとした地方公務員災害補償基金支部長の処分の取消が求められた事例。 |
参照法条 | : | 地方公務員災害補償法1条 地方公務員災害補償法26条 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務起因性 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 職業性の疾病 |
裁判年月日 | : | 1989年8月4日 |
裁判所名 | : | 浦和地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和56年 (行ウ) 4 |
裁判結果 | : | 認容(控訴) |
出典 | : | 労働判例549号62頁 |
審級関係 | : | 控訴審/06125/東京高/平 3.12.19/平成1年(行コ)98号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕 原告は、業務と疾病の間の因果関係の存否の判断に当たっては、被災者側が当該疾病発生と関連するに足りる業務に従事していた者であることと被災者に当該疾病が発症したということを証明すれば、被災者の右疾病が「業務上」の疾病でないと主張する者において、当該疾病が業務と関連性を有しないことを明確に証明しない限り「業務上」発症したものと推定されなければならないと主張する。 しかしながら、当該疾病は当該業務に従事したときに発症するのが通常であるというようなものであれば格別、そうでない限り、原告主張のような推定はできないところ、後記のように、原告に発症した症状が原告の担当した業務に従事すれば発症するのが通常であると認めるに足りる証拠はないので、原告の右主張は採用できない。 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-職業性の疾病〕 原告の担当業務については当事者間に争いがなく、原告の業務内容、勤務状況、保母の配置状況、保育所の環境等についての裁決の認定事実については当事者間に概ね争いがない。そして、(証拠略)、原告本人尋問の結果(第一回)並びに弁論の全趣旨を合わせれば、原告の業務の特質は、概ね原告主張のとおりであり、しゃがんだり、中腰の姿勢を続けたり、頭を前後左右に曲げたりすることを余儀なくされ、頚、肩、腕、手、背中、腰等に負荷を与え、その部分にこり、だるさ、痛みを誘発し易いものであったことが認められる。労働環境、勤務状況等についても、(人証略)と原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨を合わせると、統計数字等からは分かりにくい負担があったことが窺われる。 (7)公務起因性 そこで、原告の症状が公務に起因するかどうかについて考えるのに、(証拠略)並びに弁論の全趣旨を合わせれば、原告は、越谷市に就職し蒲生保育所において保母の業務に相当期間従事するようになってから前記のような症状が現れてきたこと、原告が業務を離れてからは首、肩、腕の症状が改善ないし消失したこと、原告と職場をともにする同僚保母の中にも腰、腕、背等の痛みを訴えるものが相当数おり、昭和四九年当時一五名中四名が病気となり、原告を除く三名の病名は、一人のそれは自律神経失調症、頚肩腕症候群、別の一人のそれは背痛、残りの一人のそれは背、腰痛であったことが認められる。 そうすると、原告には、前記のような疾病があったとはいえ、原告の頚肩腕症候群、腰痛の症状は公務に起因するというべきで、公務に起因するとは認められないとした本件処分を是認できない。 |