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ID番号 05713
事件名 措置要求に対する判定等の取消請求事件
いわゆる事件名 名古屋市人事委員会事件
争点
事案概要  市立小学校の教員が外国研修旅行を教育公務員特例法二〇条に基づく研修として承認し、職務専念義務の免除をもとめる措置要求に対してなされた、右要求は地方公務員法四六条にいう「勤務条件」ではないから取り上げないとした市人事委員会の判定の取消が求められた事例。
参照法条 地方公務員法46条
教育公務員特例法20条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 教員の職務範囲
労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 労働義務の内容
裁判年月日 1990年6月22日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 判決
事件番号 平成1年 (行ウ) 23 
裁判結果 認容(控訴)
出典 行裁例集41巻6・7号1212頁/時報1371号78頁/タイムズ763号209頁/労働判例581号62頁
審級関係 控訴審/名古屋高/平 4. 3.31/平成2年(行コ)13号
評釈論文 秋山義昭・判例評論390〔判例時報1385〕206~210頁1991年8月1日
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-教員の職務範囲〕
〔労働契約-労働契約上の権利義務-労働義務の内容〕
 職務専念義務の免除がされた場合、職員は、勤務時間中であっても、その勤務時間及び注意力のすべてを職責遂行のために用いて職務に従事すべき義務から解放され、職務上の上司の直接の監督から離れ、右免除がされた目的の範囲内において一定の裁量の巾をもって時間使用をすることが許されることとなる。
 ところで、職務専念義務の免除は、勤務時間中の服務に関する事項であり、これを承認するか否かの判断は必然的に公務の管理、運営と関連する。本件においては、A小の校務運営上の影響の有無、程度等を考慮して右判断がされなければならないものであり、原告に対し職務専念義務の免除の承認をするか否かは学校の管理運営事項であるといわなければならない。しかしながら、他面において職務専念義務の免除がされた場合当該職員は服務の根本的な義務を免れるのであり、形式的には勤務時間中といっても、勤務時間及び注意力のすべてを職責遂行のために用いるべき義務から解放され、免除の趣旨に従い自己の裁量をもって時間使用することが許されることになるから、多くの場合実質的に休暇又は勤務を要しない日の指定がされた場合と大差ないことになる。したがって、職務専念義務の免除の問題が管理運営事項であるからといって、そのことから直ちにそれが勤務条件と関連しないとはいえないのであって、むしろ職務専念義務免除の問題は、原則的に勤務条件と関連するものというべきである。
 もっとも、本件における職務専念義務の免除は、勤務時間中にいわゆる校外研修を行うことを承認するものにほかならないから、厚生計画参加の場合などとは異り、直ちに休暇等と同視することはできない。しかしながら、教育公務員は、勤務時間の内外を問わず、絶えず研究と修養に努めることが義務づけられているのであり(教特法一九条一項)、真に必要とされる研修が同法二〇条二項の研修として承認されないときは、これに参加するために休暇、休日を実質的に返上せざるを得ないことになる。したがって、右研修承認の問題は、右の側面からみても勤務条件と関連を有するのであり、以上を総合すると、本件において原告が求めた研修の承認とそれに伴う職務専念義務の免除の問題は学校の管理及び運営に関する事項であると同時に地公法四六条の勤務条件に関する事項でもあり、したがって、同条の措置要求の対象になるものというべきである。