全 情 報

ID番号 05726
事件名 賃金請求控訴事件
いわゆる事件名 文英堂事件
争点
事案概要  時限スト(始業から一五分)後の就労を会社が拒否し、全一日の賃金を支払わなかったのは不当であるとして、その間の賃金が請求された事例。
参照法条 労働基準法11条
労働組合法8条
民法536条2項
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 争議行為・組合活動と賃金請求権
賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / ロックアウトと賃金請求権
裁判年月日 1990年11月29日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 平成2年 (ネ) 577 
裁判結果 棄却
出典 労働判例584号78頁
審級関係 一審/04869/東京地/平 2. 2.16/昭和63年(ワ)1541号
評釈論文
判決理由 〔賃金-賃金請求権の発生-争議行為・組合活動と賃金請求権〕
〔賃金-賃金請求権の発生-ロックアウトと賃金請求権〕
「労働争議の場において、使用者が労働者から提供された労務の受領を拒否することにより賃金支払義務を免れるためには、労働争議における労使間の交渉態度、経過、労働者側の争議行為の態様、これによって使用者側の受ける打撃の程度等に関する具体的諸事情に照らし、その労務受領拒否が衡平の見地から見て労働者側の争議行為に対する対抗防衛手段として相当であることを要すると解せられる。〔中略〕
 以上認定したところによれば、たしかに、支部組合の長年にわたって行ってきたストライキ、組合外出、「九時・五時闘争」等により控訴人の東京支社における就業秩序にかなりの混乱があり、また、控訴人とA労働組合間の賃金体系、団体交渉ルール設定をめぐる紛争も極度に行き詰まった状況にあったということができる。しかし、右の状況を十分に考慮に入れるとしても、一の1ないし3において認定したように、本件ストライキが、始業後一五分間に限る、同日就業可能な支部組合員全員の参加する形態によるものであり、前記のように右一五分間を除くと一日の就労が意味を持たないという事情は認めがたいのであるから、本件ストライキによって控訴人の当日の業務に著しい打撃が加えられるものとは認められず、また、これが控訴人に著しく不利な圧力を加えるものとも認め難い。そうしてみれば、右認定の具体的諸事情のもとにおいてなされた本件就労拒否の通告は、衡平の見地からみて本件ストライキに対する対抗防衛手段として相当なものであったとはいいがたく、結局、それが正当な理由に基づいてなされたものということはできない。したがって、控訴人の右主張は採用できない。」