ID番号 | : | 05727 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 東京エコン建鉄・タカミ工業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 建物建築の鉄筋組立工事に従事していた労働者がクレーンの吊り荷が背中にあたり受傷した事故につき、請負人、下請人に対して安全配慮義務違反等を理由として損害賠償が請求された事例。 |
参照法条 | : | 民法415条 民法715条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任 |
裁判年月日 | : | 1990年11月30日 |
裁判所名 | : | 横浜地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和62年 (ワ) 3550 |
裁判結果 | : | 棄却(控訴) |
出典 | : | タイムズ764号194頁/労働判例594号128頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕 工事の請負人が、工事に従事してはいるが直接の被傭者でない、下請ないし再下請あるいはそれ以下の下請の従業員に対して安全配慮義務を負うのは、請負人が契約上の地位に基づいて工事の現場を支配し、事実上右従業員が右請負人の指揮監督の下で作業に従事しているという関係にある場合に限られるというべきである。 工事の請負人は、工事に請負人として参加することにより利益を上げる者ではあるが、単に利益を享受するということだけから信義則上当然に工事に従事するすべての者に対し安全配慮義務を負うということはできず、契約上の地位により工事の進行、施設の管理、作業員に対する指揮監督をするなど現場支配があってはじめて、他の者とは異なり、指揮監督下で工事に従事する者に対し、その生命、身体、健康等の安全について配慮すべき債務を負担すると言えるようになるからである。 また、請負人が下請負人の不法行為について使用者責任を負うのは、請負人が下請負人に対し指揮監督をし、実質的に両者間に使用関係のある場合であるというべきである。〔中略〕 被告Y1会社とA会社との請負契約には、足場、防網等安全施設の設置は含まれておらず、右両名の間では、A会社が元請けとしてこれらを用意するとの了解があった。 以上が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。 右認定の事実によれば、本件工事の現場には、A会社が元請として現場事務所を置いたうえ、所長以下従業員を常駐させ、Bが右現場所長の指揮監督の下、原告を含む訴外門配下の作業員を使って本件工事を進め、足場、防網等の安全施設の設置についてもA会社が責任を負うことになっていたのであり、一方、被告Y1会社は、事実上鉄骨の製作、搬入のみを担当し、現実に本件工事の現場に従業員を派遣せず、また、被告Y2会社も一〇万円程度の利鞘を取って本件工事をBに回しただけで、作業員も監督者も派遣していなかったのであるから、本件工事はA会社とBが現場を支配し、その指揮監督のもと原告ら作業員が作業に従事していたのであって、被告らが現場を支配し、Bあるいは原告らに対する指揮監督権を行使することはなかったというべきである。 確かに、被告Y2会社については、前記認定のとおり、Bが同被告の仕事を請負うことが多く、本件工事でも同被告所有の工具を一部使用し、更には、同被告のネームの入った作業服、ヘルメットを身に付けていたなど、Bが被告Y2会社の専属的下請で同被告の指揮監督を受けて本件工事をしていたことを窺わせる事情が存在するが、被告Y2会社とBは同業者で互いに仕事を回しあっていた関係にたっていたこと、Bが固定式クレーンの操作をするに至った経緯その他前記認定の事実関係に照らすと、右のような事情から直ちにBが被告Y2会社の指揮監督を受けて本件工事をしていたと認めることはできず、他に、これを認めるに足りる証拠はない。 |