全 情 報

ID番号 05730
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 ニューライフ事件
争点
事案概要  消費者向けの月刊雑誌を発刊している会社に対して、元従業員が担当業務が詐欺まがいのものであったとして損害賠償を請求した事例。
参照法条 労働基準法2章
民法415条
民法709条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償
裁判年月日 1990年12月12日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成1年 (ワ) 10214 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1418号21頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 何人も他人に対し違法行為を命ずることはできないのであるから、雇用契約により労務指揮権を有するに至った使用者であっても、労働者が提供する労働力を違法な営業活動のために利用することができないのは当然であるから、使用者は、労働者に対しその退職の自由を侵害してまで違法な業務に従事することを命ずることはできず、また、労働者が右命令に従わなかった場合においても、このことを理由に労働者に不利益を課すことはできない。
 したがって、使用者の行っている業務が違法と評価される場合において、使用者が労働者に負っている義務とは、労働者が右業務から離脱する自由を侵害しないこと及び労働者が右業務に従わなかった場合においてもこれを理由に不利益を課さないことであると解するのが相当である。原告の前記主張は、この限度で首肯できる。
 そこで、本件において、被告会社に右義務に違反した事実があったか否かにつき考えるに、原告本人尋問の結果によれば、原告は、平成元年五月に被告会社の業務実態を認識した以後においても被告会社から命ぜられた業務を積極的に拒否することも、退職を申し出ることもせず、漫然と被告会社に出社して給与の支払を受けていたこと、その間、被告会社あるいは被告市原から原告が主張する違法な業務である企業からの広告取りの仕事を強制されたことはなく、現に同月以降原告は広告を一件も取ることはなかったこと、同年一〇月二〇日に解雇予告手当の支給を受けて解雇されたが、右解雇自体原告の意に反するものではなかったことが認められ、右事実によれば、本件において、被告会社に前記意味での義務違反があったと認めることはできない。
 なお、原告が平成元年四月まで取得していた歩合給をその後広告取りをしなくなったことにより得られなくなった(この事実は原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によって認められる)点については、右結果が、原告が歩合給を発生させる根拠たる業務を行わなかったことにより生じたものにすぎないことからして、これをもって被告会社が原告が違法な業務を拒否したことに対し課した不利益と認めることはできない。
 したがって、原告の被告会社に対する請求は、その余の点につき判断するまでもなく理由がない。