ID番号 | : | 05732 |
事件名 | : | 地位確認等請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 国鉄武蔵溝ノ口駅事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 駅長に対する反抗的態度、助役に対する暴行等を理由としてなされた国鉄職員に対する懲戒免職処分の効力が争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 日本国有鉄道法31条 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 暴力・暴行・暴言 |
裁判年月日 | : | 1990年12月13日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成1年 (ネ) 3665 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例578号54頁 |
審級関係 | : | 一審/04932/東京地/平 1.10.20/昭和62年(ワ)3545号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-暴力・暴行・暴言〕 本件事案は、駅長の事務室内で、上司である駅長が、控訴人が他の駅において取った行動や健康診断を受けなかったこと等につき注意をしたところ、それに対して反抗的な態度をしたことに端を発し、助役であるAがそのような態度を取る控訴人にはコピー機を貸せないと、コピー機の使用を止めようとしたところ、それに抵抗した控訴人においてAを殴打したというものである。 控訴人は、当時非番であったから、右は私的なトラブルと評価すべきで、上司と部下が職務上の関係でやりあったものととらえるべきでないと主張する。しかし、駅長事務室という公的場所において執務中の駅長が、当時非番であるといえ、その場にたまたま居合わせた部下である控訴人に上司として日頃の執務態度等について注意をするということは、特に異とするに足りない。そして、コピー機を管理する立場にある助役において、駅長の注意に対して反抗的な態度をとった控訴人に対してコピー機の使用をやめさせようとしたことも、その方法が最善であったかどうかは別として、コピー機を管理する立場にある者として許されないものではない(国鉄当局が組合側に従来からコピー機の使用を許諾してきたからといって、コピー機の使用につき組合に当然権利があるということにはならない。)そして、その行動は駅長事務室という公の場での助役としての業務の執行と評価されるのであり、これを単純に、例えば勤務時間外に飲み屋で職員同士が喧嘩するような場合と同様の私的な行為であると評価するのは適当でない。むしろ、国鉄が管理している駅長事務室内において、上司からの注意に対して反抗的態度をとり、かつ、コピー機の使用について当局側の指示に従わず、反抗の上上司に暴力を振るったというものであるから、それは甚だしく職場の秩序ないし規律を乱す非行として、到底放置しえない事案であったといわなければならない。仮に、Aの方にも若干挑発的な振る舞いがあったとしても、また、その暴行行為が一回だけで短時間にすぎず、けがの程度も軽微であり、Aの業務にさほどの支障がなかったとしても、その評価に変わりはない。加えて、控訴人には過去に三回の処分歴があるのであって、これらがいずれも組合活動に関連するものであって、組合の指令に基づくものであったとしても、それは、やはり上司の指示に従わず、職場の規律を乱す内容のものであり、その意味では本件と同種の前歴であるということができるから、被控訴人が、これを本件の懲戒権の行使に当たってマイナスの要素として斟酌したとしても、何ら不当ではない。そして、また、当時は、当局側が、特に緊要の課題として、職場規律の確立を強く求めていた時期であったことも考慮すると、被控訴人においてこの非行に対し懲戒免職を選択したとしても、これを社会通念に照らして合理性を欠くとは到底いうことができない。この点に関する原判決の判示に不当な点はない。 |