ID番号 | : | 05747 |
事件名 | : | 懲戒免職処分取消請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 大阪府立東豊中高校事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 成田空港二期工事反対闘争に参加して逮捕され、約二〇日間勾留され校務運営に多大な支障を与えたとしてなされた高校の教諭に対する懲戒免職処分の効力が争われた事例。 |
参照法条 | : | 地方公務員法29条1項 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 政治活動 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の限界 |
裁判年月日 | : | 1991年1月25日 |
裁判所名 | : | 大阪高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成1年 (行コ) 21 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例585号138頁 |
審級関係 | : | 上告審/05866/最高一小/平 3.11.21/平成3年(行ツ)87号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の限界〕 公務員の懲戒権者が懲戒処分を発動するか否か、懲戒処分をするとしてそのうちいずれの処分を選ぶべきかを決定することは、その処分が全く事実上の根拠に基づかないと認められる場合であるか、もしくは、社会観念上著しく妥当を欠き懲戒権者に任された裁量権の範囲を超えるものと認められる場合を除き、懲戒権者の裁量に任されているものと解するのが相当であり、裁判所が懲戒権者の裁量権の行使としてなされた公務員に対する懲戒処分の適否を審査するにあたっては、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と右処分を比較してその軽重を論ずべきものでなく、それが社会観念上著しく妥当を欠き裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法と判断すべきものである(最高裁昭和三二年五月一〇日第二小法廷判決・民集一一巻五号六九九頁。同昭和五二年一二月二〇日第三小法廷判決・民集三一巻七号一一〇一頁)。 これを本件についてみるに、控訴人に対する本件処分に関しては、前記認定のとおり、その処分事由とされた事実が存在しているのであるから、事実上の根拠に基づかない場合には当たらず、かつ、前記認定のような本件集会およびデモ行進の経緯、デモ隊と機動隊との衝突から控訴人の逮捕に至る状況、その際の過激派集団による武力闘争の激烈さ、その社会的影響の重大さを勘案すれば、控訴人の前記認定の行為は、教育を通じて国民全体に奉仕すべき教育公務員の職務とその責任の特殊性に照らし、地方公務員法三三条所定の信用失墜行為に該当し、かつ、教職適格性を疑われても止むを得ないものというべきである。したがって、控訴人が、その主張の如く、勤務先の高校においては、熱心で真面目な教師であって、これまでの勤務態度にも格別の問題はなく、処分の前歴もないこと、本件処分に関し、同僚教師、生徒、保護者らの一部の者から、控訴人の職場復帰を願う要望書や署名簿が、被控訴人あるいは勤務先の学校長宛に提出されていたことなどの諸事情があったとしても、本件処分が、社会観念上著しく妥当を欠くものとはいえず、懲戒権者に任された裁量権の範囲を超えこれを濫用したものと認めることはできない。 |