全 情 報

ID番号 05753
事件名 療養給付金不支給処分取消請求控訴事件
いわゆる事件名 品川労働基準監督署長(アロマカラー)事件
争点
事案概要  カラーフイルムの現像作業に従事していた労働者の甲状腺機能の低下、小脳障害につき、業務災害でないとした労働基準監督署長の処分が争われた事例。
参照法条 労働基準法施行規則35条
労働基準法施行規則別表1の2
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 脳・心疾患等
裁判年月日 1991年3月13日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 平成1年 (行コ) 34 
裁判結果 棄却
出典 労働判例596号47頁
審級関係 一審/東京地/平 1. 3.30/昭和58年(行ウ)17号
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-脳・心疾患等〕
 当裁判所も、被控訴人の本訴請求は棄却すべきものと判断するが、その理由は、次のとおり付加、訂正又は削除するほか、原判決理由説示のとおりであるから、これをここに引用する。〔中略〕
 控訴人の症状が小脳機能障害によるものであるとしても、その発症は昭和四八年五月以降と認めるのが相当であり、それ以前から小脳機能障害の症状があったとする証人Aの証言は、前掲各証拠に照らし直ちに採用することができない。そうであるとすると、控訴人の小脳機能障害の発症は、控訴がチオシアン化合物に接触しなくなってから六年以上を経過してからのものであるところ、そのように長期間を経過したのちに小脳機能障害が発症することを認めるに足りる医学上の裏付け、症例も見当たらないし、また、(証拠略)によれば、控訴人がエクタクロームE2、E3に直接触れたとしてもそれによって体内に吸収されるチオシアン化合物の量は極めて微量であり、これが体内でシアンイオンに変わったとしても、内服の場合の中毒と異なり、控訴人の主張するような重篤な症状を惹き起こすものとは考え難いことがそれぞれ認められる。したがって、これらの事実にかんがみれば、(証拠略)におけるチオシアンイオンが体内においてシアンイオンに変わるとの前記見解を前提としても、控訴人がフィルムの現像処理作業でチオシアン化合物に接触することによって控訴人に小脳機能障害が生じたと認めることはできない。他に控訴人がチオシアン化合物また赤血塩に接触することによって控訴人に小脳機能障害が生じたと認めるに足りる証拠はない。