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ID番号 05755
事件名 雇用契約確認等請求事件
いわゆる事件名 池本興業事件
争点
事案概要  Y1会社・Y2会社間の業務委託契約等に基づいてY1会社からY2会社に派遣されていた者らが、右会社の各代表者が右派遣契約を解除したうえで、Y1会社を解散して従業員を解雇したことが法人格を濫用したものであるとして、Y2会社に対して雇用契約上の地位の確認等を請求した事例。
参照法条 民法623条
労働組合法7条1号
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 使用者 / 法人格否認の法理と親子会社
裁判年月日 1991年3月29日
裁判所名 高知地
裁判形式 判決
事件番号 昭和59年 (ワ) 20 
裁判結果 一部認容,一部棄却(確定)
出典 労働民例集42巻2号174頁/タイムズ788号191頁/労働判例613号77頁
審級関係
評釈論文 小西國友・ジュリスト1009号117~119頁1992年10月1日
判決理由 〔労基法の基本原則-使用者-法人格否認の法理と親子会社〕
 右認定の事実(原告らが法人格を否認すべき事情として主張する請求原因三、1ないし5の事実のほぼ全部)に基づき判断するに、被告Y3両名は、被告Y1会社の支配者であり、また、被告Y2会社の経営にかなりの影響を及ぼすことのできる立場にあると認められる。
 しかし、右認定の事実からしても、被告両社は、営業内容、株主構成、役員構成、従業員構成を異にしているといわざるをえない上、原本の存在成立に争いのない乙第八一ないし第八六号証、証人Aの証言により成立の認められる乙第八七及び第八八号証、被告Y3両名各本人尋問の結果と右乙第八一、第八三及び第八五号証によって原本の存在成立の認められる乙第一三、第六九、第九九及び第一〇〇号証、右証言及び各尋問の結果によれば、被告両社は、それぞれ別個独自に株主総会及び取締役会を開催していたし、派遣契約による派遣料を被告Y2会社から被告Y1会社へ支払うなど会計も独立していたことが認められるから、被告両社が社会的にみて単一体であるとは到底いえない。
 そして、法人格(会社)の濫用を理由としてこれを否認する場合には、その前提として、会社の背後の実体が、会社を自己の意のままに道具として用いることができる支配的地位にあり、かつ、会社形態を利用するにつき違法又は不当な目的を有していることを要すると解されるところ、被告Y2会社設立、被告両社間の派遣契約及び砂利販売取引等は、被告両社の経営上の手段であって格別とがめられるべきものではなく、被告両社間に人的物的な関連はあるにしても、被告Y2会社あるいは被告Y3両名が、被告Y1会社の背後にあって、違法又は不当な目的の下に、これを意のままに道具として用いていたとは認め難い。