全 情 報

ID番号 05761
事件名 義務不存在確認請求事件
いわゆる事件名 国鉄清算事業団(山手電車区)事件
争点
事案概要  国労の分会委員長が、品川電車区(本区)から山手電車区品川派出所への転勤命令を不当であるとして、損害賠償の請求がなされた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働組合法7条1号
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠
裁判年月日 1991年5月15日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和61年 (ワ) 1297 
裁判結果 棄却
出典 労働判例590号24頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令の根拠〕
 次に、本件命令によって原告の生活に不利益が生じたかどうかについて検討する。
 (一) 原告が本件命令直前に所属していた交番検査の勤務形態が日勤であり、本件命令によって所属することとなった品川派出所の勤務形態が一昼夜交替勤務であることは、前記認定のとおりである。
 日勤から一昼夜交替勤務に変ることによって生活のリズムが狂うなどの支障が生じることは、一般に認められているところであり、前記認定のとおり、原告には本件命令以前に一昼夜交替勤務の経験がなかったことをも併せ考えると、本件命令によって日勤から一昼夜交替勤務に変ったことにより、原告になんらかの生活上の支障、不利益が生じたことは、否定し難い。
 (二) しかしながら、成立に争いがない(証拠略)によれば、【1】電車区の車両検査係の職務には一昼夜交替勤務も当然に含まれていること、【2】旧品川電車区では、前記のとおり、昭和五九年七月以降、検修部門の職員の技術力の向上を図ると共に全職員が等しく日勤と一昼夜交替勤務を経験するようにするため、ローテーションによる定期異動を行ってきており、現に、車両検査係は、健康上の理由で勤務に耐えられないなど特段の事情がない限り、殆ど全員が一昼夜交替勤務を経験していること、【3】原告は、本件命令に伴い、住居の移転を必要としなかったことはもちろん、通勤に要する時間も、往復で従来より約三〇分短縮されたほか、各種手当てが支給されるようになって収入も増加していること、以上の事実が認められる。
 右事実によれば、本件命令によって原告に生じた生活上の支障、不利益は、旧品川電車区内の職場異動に通常伴う程度のものに留まり、それ以上に格別の支障、不利益が生じているわけではないというべきである。
 (三) 原告は、品川派出所の勤務形態は、原告には経験のない徹夜勤務を含む一昼夜交替勤務であって、突如このような勤務に就くこととなったため、生活設計に重大な不利益を被った旨主張するが、右(一)、(二)の検討に照らして、採用できないことは明らかである。
 以上、2、3で検討した点に、前記二で詳述したとおり、本件命令には業務上の必要性が肯定されることを併せ勘案すると、本件命令が、原告が正当な労働組合活動をしたことのゆえに原告に対する不利益な取扱いとして行われたもの、或いは、分会の団体の弱体化を意図して行われたものということはできない。