ID番号 | : | 05762 |
事件名 | : | 労働者災害補償保険法による遺族補償給付の不支給処分取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 加古川労働基準監督署長(ケーフルーツ)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 労災保険の特別加入者である中小企業主に発症したくも膜下出血による死亡につき、業務災害でないとした労働基準監督署長の処分が争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働者災害補償保険法27条 労働者災害補償保険法12条の8第2項 労働基準法79条 労働基準法80条 労働基準法別表1の2第9号 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 労災保険の適用 / 特別加入 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務起因性 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 脳・心疾患等 |
裁判年月日 | : | 1991年5月21日 |
裁判所名 | : | 神戸地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和62年 (行ウ) 26 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例590号16頁/労経速報1443号20頁 |
審級関係 | : | 控訴審/05920/大阪高/平 4. 4.28/平成3年(行コ)16号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕 業務上の死亡といえるためには、被災者の死亡と業務との間には相当因果関係の存在することが必要であるところ、右相当因果関係があるといえるためには、当該業務がその死亡の最有力原因であることまでは要しないが、少なくとも相当有力な原因であることが必要である。そして、被災者の死亡原因が疾病に基づく場合には、右疾病と業務との間の相当因果関係が必要であるところ、その死亡原因が基礎疾病に基づく場合であっても、業務の遂行が基礎疾病を急激に増悪させて死亡時期を早める等、それが基礎疾病と共働原因となって死亡原因となった疾病を招いたと認められる場合には、業務と死亡との間にはなお相当因果関係が存するものと解するのが相当である。 〔労災補償・労災保険-労災保険の適用-特別加入〕 労災保険は、労働者の労働災害に対する保護を目的とするものであり、本来、労働者以外の者(中小企業主等)の労働災害については保護の対象外であるが、これらの者の中には、事業の実態、災害の状況等からみて労働者に準じて労災保険により保護することがふさわしい者が存在することに鑑み、昭和四〇年の改正により特別加入制度が導入された。したがって、この制度の趣旨からすると、特別加入者の被った災害が業務災害として保護される場合の業務の範囲は労働者の行う業務に準じた業務の範囲であり、特別加入者のすべての業務に対して保護を与えることにはならない。 そして、特別加入者については、労働者と異なり、労働契約、労働協約等により労働内容が特定されておらず、業務の範囲が明確にならないことから、特別加入申請書記載の業務内容を一つの判断材料とするほか労働省労働基準監督局長が定める基準によって行うこととし(労災保険法三一条、同規則四条の二六)、現行の中小企業主等の特別加入の業務災害の認定基準(業務遂行性の判断基準)は別紙(二)(略)のとおりである。 本件におけるAの業務についても、従業員としての業務といえる業務の範囲において労災保険の適用があると解するのが相当である。 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務遂行性〕 以上の事実関係からすると、Aのくも膜下出血発症前の数か月以内に、Aに右症状の発症に結びつくような業務による甚だしい精神的、肉体的負荷が加わったものとは認められない。 原告は、継続的な精神的、肉体的疲労がくも膜下出血を発症させる原因となる趣旨の主張をし、そのように理解する考えもないではないが、それを認めるに足りる十分な資料はないうえ、Aに極度の精神的、肉体的疲労が生じていたとしても、前記認定事実によれば、通常の業務の範囲を越えた特別加入による労災保険の適用対象外の過剰な仕事に従事したことによる負担が大きいものといえる。 そうすると、Aの死亡とその業務との間に相当因果関係があると認めることができない。 |