全 情 報

ID番号 05767
事件名 雇用関係存続確認等請求事件
いわゆる事件名 協業組合ユニカラー事件
争点
事案概要  理事長に対する強要的行為、企業秘密の漏洩、虚偽事実の流布等を理由に懲戒解雇された従業員が、その効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 会社中傷・名誉毀損
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 守秘義務違反
裁判年月日 1991年5月31日
裁判所名 鹿児島地
裁判形式 判決
事件番号 昭和63年 (ワ) 738 
裁判結果 認容
出典 労働判例592号69頁/労経速報1446号17頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-守秘義務違反〕
 (一) 懲戒解雇事由としての秘密洩泄行為は、企業の存立にかかわる重要な社内機密や開発技術等の企業秘密を、その対象にしていると解せられるところ、原告らが外部へ持ち出したのは前記メモ一枚のみであり、これが「職務上知り得た会社の重要な秘密」として懲戒解雇の対象になるほどの法的保護を受けるとは考え難いこと
 (二) 右メモの記載内容は、脱税等を目的とした不正な経理操作の存在を一応推測させるものであり、結局被告は当該年度の所得につき修正申告を余儀なくされていることを考慮すれば、原告らの前記行為は、捜索方法の相当性はさておき、懲戒解雇事由としての秘密洩泄に該当するようなものとは認められない。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-会社中傷・名誉毀損〕
 1 被告主張のうち、取引先約二五社に対する誹謗中傷については、A及び三人の各供述中にこれに副う部分が一応存在するものの、右部分は、原告らが行ったとする誹謗中傷の相手方、時期、方法等についての具体性がほとんどないのみならず、その一部について時期や方法に関し返還を来していて、到底採用できず、他にこれを認めるに足りる的確な客観的証拠はない。
 2 また、従業員に対する誹謗中傷については、昭和六三年五月二九日の前後一、二週間くらいの日に、原告Xが、従業員のBとCを自宅に呼んで、「理事長は変なことをしている。」旨話したこと、また、Dに対しても同様の話をしたことが、それぞれ認められる。
 しかしながら、原告Xによる右言動の相手方は右三名にとどまること、具体的内容も右程度にすぎないこと、更に当時の被告執行部とE産業との間の前示対立状況やE産業の一員としての原告Xの立場等を考慮すれば、これらが、「会社業務に重大な影響を及ぼす」もしくは「職場規律を乱す」重大な非違行為に該当し、ただちに懲戒解雇を正当とするほどの悪質なものとはいえない。