全 情 報

ID番号 05782
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 恵城保育園事件
争点
事案概要  保育園の主任保母に対してなされた、会計管理上の越権行為、職責違反、虚偽事実の流布等を理由とする降格処分につき、その効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
民法1条3項
民法536条2項
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度
賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 無効な解雇と賃金請求権
裁判年月日 1991年8月12日
裁判所名 高松地丸亀支
裁判形式 判決
事件番号 昭和63年 (ワ) 148 
裁判結果 一部認容,一部棄却
出典 労働判例596号33頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕
 被告主張(一)(二日間の保育拒否)の事実については、その前提となる本件降格が無効であるばかりでなく、本件全証拠によっても、原告が二日間にわたって保育を拒否したことを認めるに至らない。
 同(二)(保育時間中の私的な会合)の事実については、本件全証拠によっても、これを認めるに至らない。
 同(三)(父母の会の冊子配布)の事実については、父母の会では昭和五六年二月八日に臨時総会が予定され、用意されたプログラム、経過報告、同総会における議案を含んだ冊子が父母らに配布されたことはある(〈証拠略〉)。しかし、この冊子は父母の会がその責任において作成したものであって、原告が父母の会をしてこれを作成、配布させたことを認めるに足りる証拠はない。
 2 本件解雇の効力
 以上、本項及び前第二項で認定したところによれば、原告には就業規則所定の普通解雇事由が存在するものとは認められず、本件解雇は解雇権の濫用であって、無効である。
〔賃金-賃金請求権の発生-無効な解雇と賃金請求権〕
 本件解雇は無効であり、以上で認定した事情に照らせば、被告が解雇の有効に固執して原告の就労を拒否した期間についても、原告は、民法五三六条二項本文に基づき、賃金請求権を取得する。そして、解雇期間中の賃金の額は、解雇がなければ雇用契約上確実に支給されたであろう賃金の合計額と解するのが相当である。
 2 通勤手当の請求について
 被告の給与規程(〈証拠略〉)によれば、同手当は運賃相当額(ただし、交通用具使用者については、距離に応じた額。)を支給することとされ、現実にも園では通勤距離等に応じて同手当を支給していた(〈証拠略〉)。そうすると、通勤手当は現実に就労した場合の実費補償の性質を有すると解するのが相当であり、被告が原告の就労を認めた期間に限り通勤手当請求権の発生を認める。