全 情 報

ID番号 05784
事件名 給料請求事件
いわゆる事件名 国際情報産業事件
争点
事案概要  会社が割増賃金につき、通常の賃金にそれを含めて支払っているとしたのに対して、通常の賃金に割増賃金は含まれていないとして、割増賃金の請求がなされた事例。
参照法条 労働基準法37条1項
労働基準法3章
体系項目 賃金(民事) / 割増賃金 / 法内残業手当
裁判年月日 1991年8月27日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成1年 (ワ) 5536 
裁判結果 一部認容,一部棄却
出典 労経速報1437号24頁/労働判例596号29頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-割増賃金-法内残業手当〕
 そもそも、労働基準法三七条は、同条所定の最低額の割増賃金の支払を使用者に義務づけることによって、同法の規定する労働時間の原則の維持を図るとともに、過重な労働に対する労働者への補償を行おうとするものであるから、同条所定の額以上の賃金が割増賃金として支払わればその趣旨は満たされ、それ以上に、割増賃金の計算方法や支払方法を同条の予定しているとおりに履行することまで義務づけているものではないことは確かである。したがって、このような労働基準法三七条の趣旨からすると、結局、額さえ割増賃金以上のものであれば、定額制や直接は他の算定基礎を用いて算出する手当を支給する方法も許容されていると解してよいことになる。このため、月に支払われる賃金の中に、割増賃金の支払方法として、通常賃金に対応する賃金と割増賃金とを併せたものを含めて支払う形式を採用すること自体は、労働基準法三七条に違反するものではない。しかしながら、このような支払方法が適法とされるためには、割増賃金相当部分をそれ以外の賃金部分から明確に区別することができ、右割増賃金相当部分と通常時間に対応する賃金によって計算した割増賃金とを比較対照できるような定め方がなされていなければならない。
 けれども、本件では、被告は、単に「基本給」又は「基本給と諸手当」の中に時間外賃金相当額が含まれていると主張するだけで、時間外賃金相当額がどれほどになるのかは被告の主張自体からも不明であり、これらによって労働基準法三七条の要求する最低額が支払われているのかどうか、検証するすべもない。そうしてみると、基本給等の中に時間外賃金が含まれていたという被告の主張は採用することができない。
 以上によると、被告には七時間を超える原告らの労働に対する時間外賃金の支払義務が生じたものといわなければならない。