全 情 報

ID番号 05821
事件名 未払賃金等請求事件
いわゆる事件名 キンキ商会事件
争点
事案概要  名目上、会社の専務取締役たる地位にあった労働者が、会社から立ち入り禁止の通告を受け、働けなくなった状況のもとで、会社に対する貸付金の支払と未払い賃金の支払を求めた事例。
参照法条 労働基準法24条1項
体系項目 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 全額払・相殺
裁判年月日 1991年10月29日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成2年 (ワ) 8707 
裁判結果 認容
出典 労働判例599号73頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-賃金の支払い原則-全額払〕
 弁論の全趣旨によると、被告はその設立以来取締役会を開催したことはないこと、原告は、被告の設立と同時に専務取締役に就任したが、実際には営業、荷作り、種々の雑用に従事し、取締役としての仕事はなく、自ら取締役として行動したこともなかったこと、この間、原告は自己資金を被告の運営資金として融資する等し、経理面について意見を述べたことはあったが、取締役の純子が小切手振出等を含めて経理を担当していたこと、原告は、少なくとも昭和六二年以降、毎月二四日締めで「給料」として四〇万円の支給を受けていたこと、原告は平成二年六月二五日から同年七月一五日まで稼働したが、被告は原告に対し、同月一六日以降、会社内への立入禁止を通告し、稼働を拒否したこと、原告は同年七月分の四〇万円の支払を受けていないことが認められる(被告は、原告の強迫により毎月四〇万円を支払ってきた旨主張する。しかし、被告は強迫の具体的内容を主張しないのみならず、〔中略〕、被告は原告に対し長期間にわたり毎月四〇万円の支払を継続し、殊に原告が脳梗塞で入院中の平成二年春頃以降も四〇万円の支払を継続していたことに照らすと、原告が被告側に対する強迫により四〇万円の給付を受けていたと認めることは困難である)。
 右認定事実によると、原告は名義上の取締役であったが、実質上は被告の従業員として勤務してきたものであるから、原告が被告から支払を受けていた四〇万円は従業員としての賃金であると解するのが相当であるところ、同年七月分の賃金四〇万円が未払であることは明らかである。