ID番号 | : | 05825 |
事件名 | : | 業務外認定処分取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 静岡労働基準監督署長事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 脳動脈瘤の基礎疾病を有する労働者の出張業務中の脳出血による死亡につき、業務災害でないとした労働基準監督署長の処分が争われた事例 |
参照法条 | : | 労働基準法施行規則35条 労働基準法施行規則別表1の2第9号 労働基準法79条 労働基準法80条 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 脳・心疾患等 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務起因性 |
裁判年月日 | : | 1991年11月15日 |
裁判所名 | : | 静岡地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和61年 (行ウ) 7 |
裁判結果 | : | 認容(控訴) |
出典 | : | 労働民例集42巻6号844頁/時報1406号8頁/タイムズ773号274頁/労働判例598号20頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 佐藤進・ジュリスト1026号150~152頁1993年7月1日 |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕 労基法七九条、八〇条にいう「労働者が業務上死亡した場合」とは、労働者が業務に起因する負傷または疾病に基づいて死亡した場合をいうが、これを脳出血の疾病についてみるに、脳出血は、身体的素因等から業務に無関係に発生する可能性も高いものであるから、これが業務遂行中に発症した場合であっても、直ちにこれが業務に起因するものとは言い難く、その発症と業務との間に相当因果関係がある場合に、業務に起因する疾病と判断すべきである。そして、業務と疾病の発症との間に相当因果関係がある場合とは、単に、疾病が業務のみを原因として発症した場合だけではなく、業務と身体的素因等が共働して疾病が発生した場合も含むが、業務が相対的に有力な原因であることが必要であって、単に、業務が疾病発症の誘因ないしきっかけとなったにすぎない場合は、業務と疾病の発症との間に相当因果関係がある場合には含まれないと解するのが相当である。〔中略〕 以上の考察に照らすと、Aの出張中の本件業務は、Aに対して身体的、精神的に過重な負荷を与えたと認められ、このような負荷によって、前記のAの身体的素因である脳動脈瘤ないし脳動静脈血管奇形を急激に増悪し、その破裂に至らしめ、脳出血を招来したものと推認するのが相当というべく、本件業務の負荷の過重であることに照らすと、本件業務は、Aの脳出血の発症及びそれによる死亡について相対的に有力な原因となったと認めることができるから、Aの本件業務とその死亡との間には相当因果関係を認めるのが相当であり、Aの死亡は、労基法七九条、八〇条にいう「労働者が業務上死亡した場合」に該当するものと判断するのが相当である。 |