全 情 報

ID番号 05826
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 国鉄清算事業団事件
争点
事案概要  年休の時季指定日に予定を繰り上げた形でストライキが行なわれ、それに労働者が参加した場合につき、時季指定日に年休が成立するか否かが争われた事例。
参照法条 労働基準法旧39条3項,39条4項
体系項目 年休(民事) / 年休の自由利用(利用目的) / 一斉休暇闘争・スト参加
裁判年月日 1991年11月19日
裁判所名 最高三小
裁判形式 判決
事件番号 平成2年 (オ) 576 
裁判結果 棄却
出典 民集45巻8号1236頁/時報1438号144頁/タイムズ801号105頁/裁判所時報1063号2頁/労働判例599号6頁/労経速報1456号3頁/金融商事905号32頁
審級関係 控訴審/04861/東京高/平 2. 1.31/昭和63年(ネ)3141号
評釈論文 下井隆史・判例評論413〔判例時報1455〕219~222頁1993年7月1日/金子征史・労働判例百選<第6版>〔別冊ジュリスト134〕106~107頁1995年5月/山田桂三・労働判例百選<第7版>〔別冊ジュリスト165〕122~123頁/小宮文人・法学セミナー37巻7号141頁1992年7月/青柳馨・法曹時報45巻2号369~383頁1993年2月/石井保雄・季刊労働法165号158~160頁1992年12月/長淵満男・民商法雑誌107巻1号137~150頁1992年10月/島田陽一・平成3年度重要判
判決理由 〔年休-年休の自由利用(利用目的)-一斉休暇闘争・スト参加〕
 上告人は、同月二一日津田沼電車区長に対し、その有する年次休暇の日数の範囲内で、同月二八日の午後半日の年次休暇の請求をしていたが、同月二七日、動労千葉は、当初同月二九日に予定していたストライキを繰り上げて同月二八日正午から実施する旨を決定した。このことを上告人は組合内部の情報により知ると、A助役にただして年次休暇の請求が事実上承認されていることを確認しながら、右請求をそのまま維持した上、同月二八日午後は勤務しなかった。その間、上告人は、同日午前一一時五五分ころから動労千葉津田沼支部事務所わきで開かれた組合員の集会に参加し、同日午後四時過ぎころから同六時過ぎころまでの間に津田沼電車区構内で行われたスト決起集会では、本部執行委員Bとともに組合員らの前に立ってシュプレヒコールの指揮をし、また、同日午後一時過ぎころ同電車区指導員詰所において、右BらとともにC助役に対し、当局側が当日のストライキ対策のため指導員を乗務させたことにつき大声で詰問、抗議するなどして、同助役の職務の執行を妨害し、右争議行為に積極的役割を果たした。
 右事実によれば、上告人は、前記争議行為に参加しその所属する事業場である津田沼電車区の正常な業務の運営を阻害する目的をもって、たまたま先にした年次休暇の請求を当局側が事実上承認しているのを幸い、この請求を維持し、職場を離脱したものであって、右のような職場離脱は、労働基準法の適用される事業場において業務を運営するための正常な勤務体制が存在することを前提としてその枠内で休暇を認めるという年次有給休暇制度の趣旨に反するものというべく、本来の年次休暇権の行使とはいえないから、上告人の請求に係る時季指定日に年次休暇は成立しないというべきである。