ID番号 | : | 05832 |
事件名 | : | 地位保全仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本電信電話事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | NTTの既婚の女子職員が、木更津電報電話局から千葉電報電話局に配転命令を受けたのに対して、右命令は通勤時間の長時間化等著しい不利益を与えるもので無効であるとして元の職場の従業員たる地位保全の仮処分を申請した事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の限界 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の濫用 |
裁判年月日 | : | 1991年12月12日 |
裁判所名 | : | 千葉地木更津支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成1年 (ヨ) 21 |
裁判結果 | : | 却下 |
出典 | : | タイムズ787号197頁/労経速報1447号3頁/労働判例599号14頁 |
審級関係 | : | 控訴審/05935/東京高/平 4. 7.15/平成3年(ネ)4525号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令の根拠〕 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の限界〕 右認定事実によると、債権者らが、長年にわたり木更津局において手動運用部門の業務に従事してきたことは明らかであるが、この事実から直ちに債権者らの勤務場所を木更津局と限定する雇用契約が締結されたということはできず、また強制配転をしない慣行が存在したと認めることもできない。かえって、債権者らの採用形態は、関東電気通信局管内に勤務させるという通信局採用であるうえ、採用に際して、債権者らは、勤務場所の変更がありうる旨の記載のある就業規則など債務者(当時の電電公社)の諸規定を遵守する旨約していること、木更津局においても、過去多くの転用事例が見受けられ、その転用の多くは債務者の業務の必要性に基づいて行われたこと、全社的にも、昭和三〇年一二月以来苦情処理委員会が存在し、配置転換に伴う多くの苦情が処理されてきたこと、その他債権者らの入社資格、入社時の事情、会社における地位、職種、会社の規模、事業内容及びその後の慣行などに鑑みると、債権者らについて、業務運営上の必要性がある場合には、その必要に応じ、同意なしに勤務場所の変更を命令する権限が債務者に留保されていると見るのが相当である。 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の濫用〕 債権者らは、電子番号案内方式は、全国の電話加入者を対象として作成したデータベースを維持管理しているコンピュータセンターと各電子番号案内台を電気通信回路で接続し、氏名・住所を入力すれば、自動的に電話番号の検索を行うというものであるから、中央と末端とも電気通信回線で接続しさえすればよいわけであり、末端の電子番号案内台を特定の局に集中して設置する必要など全くないと主張する。また、債権者は、電子番号案内方式の下では、地域に関係なく、ランダムな受付を可能にしているから、その設備さえ整っていれば、木更津局で千葉県内から発信された全部の案内呼を処理することも可能であり、ある局の業務量は、その局の要員数決定の要因たりえないと主張し、(証拠・人証略)にはこれに沿う記載ないし供述部分がある。しかし、右は(証拠略)に照らすと、電子番号案内方式を誤認しているか、独自の見解を述べるにすぎず、採用できない。すなわち、前記疎明によれば、債務者は、千葉支社管内の番号案内実施局を六局に集約し、同支社管内の番号案内呼を処理することとして、各局ごとに受持エリアを設定し、その必要要員については、前年度時間帯別の年間平均業務量と受持エリアの規模加入数に見合った負荷を基にして各実施局の服務編成などをも考慮して決定したこと、電子番号案内方式におけるランダム受付方式の機能は、受持エリアを担当する番号案内実施局に着信し、故障や多忙でその番号案内実施局の案内台がすべて塞がっているときは、支社管内の他の番号案内実施局に着信するようになっていることが一応認められる。従って、このような電子番号案内方式を導入するに当たっては、その設備及び維持管理を考慮するほか、受持エリア設定と優先受付、業務量に見合った要員決定と配置を行う必要のあることは明らかである。そして、必要要員をどこにどれだけ配置するかは、各事業の将来性、各局の実績、需要動向等を勘案して決すべき専門的、裁量的な経営上の判断であり、本件配置転換にあたって債務者の右判断に明白かつ著しい不合理性があったということはできない。 |