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ID番号 05840
事件名 賃金請求控訴事件/同附帯控訴事件
いわゆる事件名 岩手銀行事件
争点
事案概要  扶養親族を有する世帯主に支給される家族手当・世帯手当について共働きの女子従業員について支給を制限する支給規程の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法11条
労働基準法4条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 男女同一賃金、同一労働同一賃金
賃金(民事) / 賃金の範囲
裁判年月日 1992年1月10日
裁判所名 仙台高
裁判形式 判決
事件番号 昭和60年 (ネ) 248 
昭和61年 (ネ) 119 
裁判結果 棄却・附帯控訴認容(確定)
出典 時報1410号36頁/タイムズ777号87頁/労経速報1449号10頁/労働判例605号98頁/労働民例集43巻1号1頁/法律新聞1044号6頁
審級関係 一審/00061/盛岡地/昭60. 3.28/昭和57年(ワ)103号
評釈論文 笹沼朋子・労働判例百選<第7版>〔別冊ジュリスト165〕64~65頁/森戸英幸・ジュリスト1040号136~138頁1994年3月1日/西村裕三・平成4年度重要判例解説〔ジュリスト臨時増刊1024〕14~15頁1993年6月/石井保雄・季刊労働法164号219~221頁1992年8月/内藤恵・月刊法学教室141号104~105頁1992年6月/齋藤周・労働法律旬報1289号52頁1992年6月10日
判決理由 〔賃金-賃金の範囲〕
 本件手当等が行員の具体的労働に対する対価(報酬)という性格を離れ、控訴人銀行の行員に対する生活扶助給付、生計補助給付であるという経済的性格をもつものであることは明らかである。しかしながら、これら手当等は、支給条件、基準等について控訴人銀行の裁量に任せられているものではなく、就業規則(給与規程)により規定され、労働協約によって決められていて、控訴人銀行は、これらの規定により所定の要件を具備する者に対しては法的に一律の支払義務を負担し、一方該当行員はこれらの手当等の受給権(支払請求権)を取得すると解することができる。このことからすると、本件手当等は労基法一一条にいう「労働の対償」に当たる賃金であると認めるを相当とする。
〔労基法の基本原則-男女同一賃金〕
 労基法四条は、憲法一四条一項の理念に基づきこれを私企業等の労使関係における賃金について具体的に規律具現した条文であり、かつまたこれに違反したときは労基法一一九条一号による刑事罰の対象となるなど、いずれにしても、明らかに強行規定であり、公序に関する規定であると解される。したがって、一般的に、労基法四条に違反する就業規則及びこれによる労働契約の賃金条項は民法九〇条(一条ノ二)により無効であるといわなければならない。
 控訴人銀行は本件規程三六条二項本文後段を根拠にして、男子行員に対しては、妻に収入(所得税法上の扶養控除対象限度額を超える所得)があっても、本件手当等を支給してきたが、被控訴人のような共働きの女子行員に対しては、生計維持者であるかどうかにかかわらず、実際に子を扶養するなどしていても夫に収入(右限度額を超える所得)があると本件手当等の支給をしていないというのだから、このような取扱いは男女の性別のみによる賃金の差別扱いであると認めざるを得ない。