ID番号 | : | 05843 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 岐阜病院事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 諭旨解雇された病院勤務の従業員(看護員)が、本件解雇の無効の仮処分で勝訴したのち、病院側が諭旨解雇を撤回し、定年退職扱いとする旨の和解をしたのちに、諭旨解雇は病院による不法行為に基づく違法なものであったとして損害賠償を請求した事例。 |
参照法条 | : | 民法709条 民法724条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償 |
裁判年月日 | : | 1992年1月30日 |
裁判所名 | : | 岐阜地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和62年 (ワ) 438 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労経速報1452号3頁/労働判例607号131頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕 原告は、原告が前異議事件及び解雇無効確認等請求訴訟の準備等に忙殺されていて、病院と和解が成立するまでは被告らに対する損害賠償請求権の行使に着手することを期待し得なかったと主張し、(書証略)を提出するが、そうした事情は、権利行使に当たっての事実上の障碍の範疇に属するものにすぎないのみならず、原告は、当時、本訴と争点を共通にする前記仮処分事件、前異議事件及び右解雇無効確認等請求訴訟等を追行していたのであるから、被告らに対する本訴のような損害賠償請求訴訟を提起することを期待し得なかったということはできないのであって、いずれにしても、右主張は採用できない。 また、原告は、前異議事件の和解が成立したのち昭和六二年八月初めごろ代理人と報酬契約を締結し、山田弁護士に対して同年八月八日に二〇〇万円を、成田弁護士に対して同年八月二四日に五〇万円をそれぞれ報酬として支払ったから、右弁護士費用については、消滅時効は完成していない旨主張する。しかしながら、報酬請求権は、訴訟代理を業とする弁護士の生計の基盤であるから、訴え提起前に訴訟追行を弁護士に委任したときは、第一審の報酬金支払契約は、特段の事情のない限り、右訴え提起までに締結されたとみるべきであり、また、訴え提起後第一審の審理の途中において弁護士に委任したときは、第一審の報酬金支払契約は、特段の事情のない限り、右委任時に締結されたものとみるべきである。 これを本件についてみるに、原告は、成田薫弁護士及び成田清弁護士に対しては、弁護士費用として二三一万円を支払ったと主張しているところ、右八月二四日に支払ったという五〇万円は、その二二パーセント弱にすぎず、また、原告は、山田弁護士に対しては、弁護士費用として四二五万円を支払ったと主張しているところ、右八月八日に支払われたという二〇〇万円は、その約四七パーセントにすぎないのであって、その余は、いずれもそれ以前に支払われていることになる。そして、他に特段の事情は認められないから、前記和解後に報酬金支払契約が締結されたとする原告の主張は採用できず、原告主張の弁護士費用については、成田薫弁護士、成田清弁護士及び山田幸彦弁護士の名前が準備書面に現れる最も古い時期である昭和五六年五月一八日(書証略)以前に、既にそれぞれ報酬金支払契約が締結されたものとみるべきである。 さらに、原告は、被告らが消滅時効を援用することが信義則に反し、権利の濫用であると主張するが、本件において、被告らの消滅時効の援用を権利の濫用とする事情は認めることができない。 そうすると、被告らに原告主張の不法行為責任があるとしても、本訴が提起されたのが昭和六二年八月二八日であるから、民法七二四条により、原告が本訴で被告らに対して請求する損害賠償請求債権は時効により消滅していることが明らかである。 |