ID番号 | : | 05856 |
事件名 | : | 労働者災害補償給付に関する処分取消請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 今市労働基準監督署長(トンネル坑夫)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 障害補償給付請求権の消滅時効につき、労働者が症状の安定ないし固定およびその業務起因性を認識しえた時点から開始するとした原判決が維持された事例。 |
参照法条 | : | 労働者災害補償保険法42条 民法724条 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 補償内容・保険給付 / 時効、施行前の疾病等 |
裁判年月日 | : | 1991年6月27日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成2年 (行コ) 148 |
裁判結果 | : | 控訴棄却 |
出典 | : | 労働判例608号79頁 |
審級関係 | : | 一審/宇都宮地/平 2. 9.27/昭和63年(行ウ)3号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-補償内容・保険給付-時効、施行前の疾病等〕 医師による専門的、医学的検査と診断を受けてはじめて当該傷病が業務に起因するものであると判明する場合があり得ることは前示のとおりであるが、常に労働者が右検査、診断を受けて当該傷病が業務に起因することを覚知しなければ時効が進行しないと解することは相当ではなく、当該労働者において、諸般の事情から権利の存在(換言すれば権利の発生を基礎付ける事実関係である当該傷病の症状の安定ないし固定及びその業務起因性)を認識しえた場合には、業務に起因する傷病の症状の安定ないし固定の時から(右症状の安定ないし固定した後に右事実関係を認識しうるに至った場合は右認識しうるに至った時から)、時効が進行するものと解すべきである。なお、控訴人は、民法七二四条前段の規定を類推適用し、主観的要件として、権利者が業務起因性を覚知したことが必要であると主張するが、前示のとおり、労災保険給付を受ける権利は、民法上の不法行為に基づく損害賠償請求権とは性質を異にし使用者の帰責事由を問わない公法上の請求権であり、故意又は過失により違法な侵害行為をした不法行為者に対する権利行使の場合(この場合には、「知リタル時ヨリ」消滅時効が進行するが、期間は三年間の短期消滅時効とされている。)と同一に解しなければならない理由はなく、前記のように、当該傷病の症状の安定ないし固定及びその業務起因性を認識しえたのに不注意で覚知しなかった場合でも権利行使が現実に期待のできるものとして時効が進行すると解しても、権利者の保護に欠ける点はないというべきである。 |