ID番号 | : | 05888 |
事件名 | : | 休業補償給付等不支給処分取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 那覇労働基準監督署長(琉松化成)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 屋根の上で作業中、転落して負傷した場合につき、その後労働基準監督署長が「治癒(症状固定)」したと認定し、休業補償給付の不支給処分としたことが適法とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働者災害補償保険法14条 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 補償内容・保険給付 / 休業補償(給付) |
裁判年月日 | : | 1992年2月18日 |
裁判所名 | : | 那覇地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成2年 (行ウ) 2 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例610号67頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-補償内容・保険給付-休業補償(給付)〕 以上の各認定事実を総合すれば、昭和五四年一二月二〇日以降においても、原告の症状は一進一退の状況で推移しており、その改善傾向があったものとは認め難く、原告の傷病は、遅くとも同日において症状が固定し、もはや医療効果が期待し得ない状態になっていたものと認めるのが相当である。 原告は、同日以降も年々症状が改善している旨述べているが(〈証拠略〉)、前記認定事実及び前掲各証拠に対比して信用し難い。また、本件各書証中には原告の症状が軽快傾向にある旨の記載があるものも見受けられるが(〈証拠略〉)、いずれも療養経過からの他覚的所見によるものとは認められず、更に、A病院の診療録(〈証拠略〉)の昭和五五年九月一九日の欄の「症状固定を否定する方向で検討してほしい」との記載、同病院B医師作成の昭和六一年二月八日付け診断書(〈証拠略〉)の「傷病が治った日」の欄の原告の筆跡による「ここはかかないで下さい」との記載に原告本人尋問の結果を合わせれば、原告が症状固定を否定するように各医師に依頼していたことが窺われること、また、前記C医師作成の昭和五四年一二月一四日付け意見書(〈証拠略〉)、同医師作成の昭和五七年八月六日付け紹介状(〈証拠略〉)、昭和五九年二月一四日付け療養補償給付請求書(〈証拠略〉)のD病院精神科・神経科E医師の証明欄等によれば、原告が各担当医師に対して症状が軽快傾向にある旨訴えていたことが認められることに照らし、前記各書証中原告の症状が軽快傾向にある旨の記載は単に原告の訴えの内容がそのまま書き記されたにすぎないものと考えられるのであって、右記載があることの一事をもって原告の症状が改善傾向にあったものと即断することはできない。更に、原告は、治療内容の変動を主張し、A病院F医師作成の平成二年八月一四日付け証明書(〈証拠略〉)によれば、昭和六二年一〇月に牽引、ホットパック、マッサージ等の物療を打ち切ったことが認められるが、これらの治療はもともと対症療法であったと考えられるから、右のような治療内容の変動だけで原告の症状の改善の有無を判断することはできず、更に、同病院においてはその後も神経科等で治療が加えられていることが認められる以上、原告の症状が改善されたものと認めることはできない。なお、原告の主張する前訴判決は、昭和五四年一一月三〇日以前に原告が就労可能の状態にあったかどうかという争点に係るものであって、原告の症状固定の時期に関する当裁判所の前記認定の妨げとなるものではない。 以上のとおりであって、他に、右の点に関する当裁判所の前記認定を覆すに足りる証拠はない。 |