全 情 報

ID番号 05898
事件名 療養補償給付等不支給処分取消請求事件
いわゆる事件名 大分労働基準監督署長(大分放送)事件
争点
事案概要  出張中の労働者が宿泊施設の階段において転倒、死亡した事故につき、飲酒によって酩酊していたために発生したものと推定されるとして、業務起因性が認められないとされた事例。
参照法条 労働者災害補償保険法7条
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務起因性
労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 出張中
裁判年月日 1992年3月2日
裁判所名 大分地
裁判形式 判決
事件番号 昭和63年 (行ウ) 2 
裁判結果 棄却
出典 訟務月報38巻10号1905頁/労働判例613号63頁/労経速報1480号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕
〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-出張中〕
 前記認定事実によれば、Aは保養センターに到着して夕食を始めるまで何らの異常もなかったものであるから、右のような反射的な防御行為を欠いた転倒事故が発生するためには、夕食開始時以後にAが自己防衛反射を欠如することとなる原因が生じたはずのものである。前記認定の事実によれば、Aは、本件事故の約一時間ないし約二時間前までにコップ一杯程度のビールと一合半ないし二合程度の焼酎を飲んでいたものであり、本件事故後に二階方へ降りて行き、次いで、エレベーターを利用するか、再び本件階段を昇るかの何れかの方法で三階の本件客室に戻ったものと推認されるが、その間ずっと片方の足だけトイレのスリッパを履いていたものであるから、これらの事実によれば、Aはその程度は明らかではないものの、本件飲酒によって酔っていたものと推認される。そして、Aは介抱に来たBに対して、だいじょうぶだとのみ答えて転倒の原因について特に説明していないことによれば、本件事故が第三者等によって引き起こされたものではなかったものと推認される。そうとすれば、本件飲酒の影響によって、Aは自己防衛反射を欠如して本件転倒事故を発生させたのではないか、との疑問を否定することはできない。
 したがって、本件事故はAが飲酒によって酩酊していたために発生したものであって、そうでなければ発生しなかった可能性がある。そうすると、Aに業務遂行性が認められることから、直ちに本件事故の業務起因性を推認することを許すべきでない反証がある、というほかはない。