全 情 報

ID番号 05912
事件名 地位保全仮処分命令申立事件
いわゆる事件名 大阪郵便輸送事件
争点
事案概要  短期雇用契約の雇止めにつき、本件契約は形式上は期間の定めはあるが、実質上は、期間が満了しても機械的に新たな雇用契約を締結することが予定されたものであり、信義則上、解雇法理が適用される。しかし、臨時社員の雇止めについては、正社員の解雇の場合のような厳格な正当事由の存在までは必要がなく、運転士としての能力ないし資質を理由とする本件雇止めは適法とされた事例。
参照法条 労働基準法21条
民法1条2項
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1992年3月31日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成3年 (ヨ) 2984 
裁判結果 却下
出典 労経速報1463号7頁/労働判例611号32頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 以上によれば、債権者と債務者との雇用関係は、雇用契約上には期間の定めがあるが、それは形式的なものにすぎず、実質的には、雇用期間が満了しても新たな雇用契約を機械的に締結することにより継続的な雇用関係を形成することを本来的に予定したものというべきである。したがって、信義則上、新たな雇用契約を締結しないこと(以下雇止めという。)には解雇に関する法理が類推され、債務者としては、雇用期間の終了という理由だけで雇止めすることは許されないと解される。すなわち、債務者の就業規則三一条は「従業員が、次の各号のいずれかに該当するときは退職を命ぜられます。」と規定し、その(3)号で「予め指定された雇用期間が満了したとき」と定めているが、信義則上、雇用期間が満了したという事由のみで退職を命じても、それは効力を発せず、その場合には、それまでと同様の契約内容で雇用契約が更新されるものとみなされることになると解するのが相当である。
 もっとも、解雇に関する法理が類推されるとはいっても、債権者は臨時雇用契約により雇用された臨時社員であるから、正社員を解雇する場合とは自ずと事情を異にするといわざるを得ない。すなわち、疎明によれば、臨時社員は、終身雇用が前提となるいわゆる正社員に比べて、採用基準が緩やかであり、業務訓練期間一か月間程度と短期で(正社員は六か月間の試用期間がある。)、勤務時間も短く、職務内容や職種も比較的責任の軽いもので、昇格制度といったものもなく、賃金についても賃金規則の適用を受けない、特に昇給といったこともない、時間給であり、退職金制度の適用も受けないことが認められる。
 右によれば、臨時社員は、正社員に比して、緩やかな採用基準により、試用期間もなく比較的簡単に採用され、昇格や昇給、退職金制度といった雇用継続により得られる利益もほとんどなく、労務の提供等による会社に対する寄与も小さいものといえるから、これらの事情に鑑みると、本件において、臨時社員を雇止めする場合には、正社員を解雇する通常の解雇のときのような厳格な正当事由の存在までは必要なく、一定の合理的理由が存在すれば足りると解するのが相当である。