ID番号 | : | 05915 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 福岡セクシャル・ハラスメント訴訟判決 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 部下の女性の異性関係等につき、上司が職場の内外で悪評を流布した行為が、当該女性の人格権を侵害するもので不法行為が成立するとして、慰謝料の支払いが命ぜられた事例。 使用者は、被用者の労務遂行に関連して、被用者の人格的尊厳を侵しその労務提供に重大な支障を来す事由が発生することを防ぎ、またはこれに適切に対処して、職場が被用者にとって働きやすい環境を保つよう配慮する注意義務があり、被用者らを選任、監督する地位にある専務がこの義務を怠ったときは、使用者責任が発生するとして、会社に対し慰謝料の支払いが命ぜられた事例。 |
参照法条 | : | 民法709条 民法710条 民法715条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / セクシャル・ハラスメント、アカデミック・ハラスメント 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 職場環境調整義務 |
裁判年月日 | : | 1992年4月16日 |
裁判所名 | : | 福岡地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成1年 (ワ) 1872 |
裁判結果 | : | 一部認容,一部棄却(確定) |
出典 | : | 時報1426号49頁/タイムズ783号60頁/労働判例607号6頁/法律新聞1056号6頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 永田秀樹・法学セミナー37巻7号130頁1992年7月/奥山明良・労働判例百選<第6版>〔別冊ジュリスト134〕60~61頁1995年5月/横山美夏・ジュリスト1007号153~156頁1992年9月1日/香川孝三・月刊法学教室145号140~141頁1992年10月/山田省三・労働法律旬報1291号6~11頁1992年7月10日/山之内紀行・平成4年度主要民事判例解説〔判例タイムズ821〕88~89頁1993年9月/青野覚・季刊労働法166号198~201頁1993年3月/大脇雅子・日本労働法学会誌80 |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則-均等待遇-セクシャル・ハラスメント〕 〔労働契約-労働契約上の権利義務-職場環境調整義務〕 四 被告Yの不法行為責任について 1 被告Yが、被告会社の職場又は被告会社の社外ではあるが職務に関連する場において、原告又は職場の関係者に対し、原告の個人的な性生活や性向を窺わせる事項について発言を行い、その結果、原告を職場に居づらくさせる状況を作り出し、しかも、右状況の出現について意図していたか、又は少なくとも予見していた場合には、それは、原告の人格を損なってその感情を害し、原告にとって働きやすい職場環境のなかで働く利益を害するものであるから、同被告は原告に対して民法七〇九条の不法行為責任を負うものと解するべきことはもとよりである。〔中略〕 (一) 使用者は、被用者との関係において社会通念上伴う義務として、被用者が労務に服する過程で生命及び健康を害しないよう職場環境等につき配慮すべき注意義務を負うが、そのほかにも、労務遂行に関連して被用者の人格的尊厳を侵しその労務提供に重大な支障を来す事由が発生することを防ぎ、又はこれに適切に対処して、職場が被用者にとって働きやすい環境を保つよう配慮する注意義務もあると解されるところ、被用者を選任監督する立場にある者が右注意義務を怠った場合には、右の立場にある者に被用者に対する不法行為が成立することがあり、使用者も民法七一五条により不法行為責任を負うことがあると解するべきである。 |