全 情 報

ID番号 05916
事件名 各未払賃金支払請求事件
いわゆる事件名 西村産業事件
争点
事案概要  一か月の所定労働日数の全部を出勤した者(年休を取得した日を含む)に対する四〇〇〇円の皆勤手当の他に、年休を取得せずに出勤した者に対する八〇〇〇円の全皆勤手当の制度につき、後者が労基法一三四条、三九条の関係で廃止されたが、皆勤手当が八〇〇〇円になったとしてその支払いが請求されたことに対し、全皆勤手当制は労基法一三四条に違反し、ひいては三九条の趣旨に反するとし、四〇〇〇円の皆勤手当制のみが残されたとして、右請求が棄却された事例。
参照法条 労働基準法39条
労働基準法134条
体系項目 年休(民事) / 年休取得と不利益取扱い
裁判年月日 1992年4月16日
裁判所名 福岡地小倉支
裁判形式 判決
事件番号 平成2年 (ワ) 936 
平成3年 (ワ) 190 
平成3年 (ワ) 572 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1458号3頁/労働判例613号43頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔年休-年休取得と不利益取扱い〕
 2 まず、原告の主張する(二)の本件条項の趣旨の当否について判断する。
 確かに、協定書(書証略)によれば、本件協定中には、出勤奨励手当については、当事者間に争いのない本件条項以外に規定が存在しないから、これを形式的にみると、原告ら主張のように皆勤手当の増額改定の趣旨と解する余地もあり、これに副う原告吉武悟の供述部分もあるし、労基署の是正勧告(書証略)も結論的にはこれを支持するものである。
 しかし、本件条項においては、本件条項の前提となっている昭和四二年一一月の労使協定(書証略)の規定で定められた「精勤手当」「皆勤手当」と異なり、あえて「全皆勤手当」と別の名称を付していること、本件協定後平成二年七月に至るまで、出勤奨励手当について、八〇〇円、四〇〇〇円、八〇〇〇円の三種類の手当を支給する扱いが継続的になされてきて、これにつき労使間で何らの問題も生じていなかったこと(証拠略)からすると、本件条項成立の際の当事者の意思としては、それまでに存在した、一か月の所定労働日数のうち一日欠勤した者に支給する精勤手当八〇〇円、一か月の所定労働日数の全部を出勤した者(但し、その日数中には年休を取得した日を含む)に支給する皆勤手当四〇〇〇円の他に、一か月の所定労働日数の全部を年休を取得せずに出勤した者に全皆勤手当として特に八〇〇〇円を支給する制度を設けたもので、かかる制度を新設したものと解するのが相当であり、本件条項において皆勤手当の増額があった趣旨であるとする原告らの主張は採用することができない。
 3 次に(三)について判断する。
 本件条項が法一三四条に違反し、ひいては法三九条の趣旨に反することは、労基署の是正勧告(書証略)をまつまでもなく明らかである。