ID番号 | : | 05918 |
事件名 | : | 療養補償不支給処分取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 天満労働基準監督署長(今川学園キンダーハイム)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 労災保険法一三条二項の「療養の給付の範囲」は政府に決定権限が与えられており、労働省令により、鍼灸施術の療養補償期間を一年とすることにつき、政府の裁量権の逸脱はないとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働者災害補償保険法13条2項 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 補償内容・保険給付 / 療養補償(給付) |
裁判年月日 | : | 1992年4月27日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和60年 (行ワ) 88 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例612号65頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-補償内容・保険給付-療養補償(給付)〕 (2) 鍼灸施術は、罹病期間が短い場合、初療から六か月ないし一年以内に著効を示す例が多いが、罹病期間が長い場合、即ち、一年以上の既住がある場合、効果は著しく減じ、施術期間も長くなる(〈証拠・人証略〉)。又、疼痛等の除去、緩和を目的とする鍼灸施術は他の療法によって代替し得るものであるため、医家、特に整形外科医においては、単施、併施を問わず、鍼灸の施術期間を六か月ないし一年を以て足りるとする見解が有力である(〈証拠・人証略〉)。他方、一年以上継続して行われる鍼灸施術の有効性或いは一般医療と鍼灸の施術を一年以上必要とすること等を明らかにする格別の資料は乏しい。 (3) 三七五通達及び三〇連絡の策定に当たっては、医家の意見を徴し、厚生省及び日本医師会、日本保険鍼灸マッサージ師連盟とも協議を重ね、その了承を得ている。 (4) 三七五通達及び三〇連絡は、鍼灸につき、単施一年、一般医療との併施一年及び併施後の単施一年を療養補償給付期間としている上、四一〇通達及び二二二通達は、労働福祉事業として、最長二年間鍼灸施術を行い得るものとしており、労災法の運用として、全体的には長期間の鍼灸施術を保護の対象としている。 (5) 鍼灸施術は、同二三年二月二五日基発第三六一号労働基準局長回答により療養補償給付の対象とされて以来、事実上、補償給付期間の制限のない運用がなされたため濫給付と目される事例を生じていた(〈証拠・人証略〉)。 (6) 以上によると、三七五通達及び三〇連絡が一般医療と併施される鍼灸施術の療養補償給付期間を一年としたことは、現在の医療水準及び社会通念に照らし、止むを得ない措置であり、前記政府の有する裁量権を逸脱しているとは認め難い。 |