ID番号 | : | 05938 |
事件名 | : | 時間外勤務手当請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 羽後銀行事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 銀行の完全週休二日制の実現のために、一定の日数につき一日の労働時間を延長する就業規則の変更につき、土曜日がすべて休日になり、年間所定労働時間が四二時間一〇分短縮されること等を考慮し、右変更には合理性があるとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条 労働基準法93条 |
体系項目 | : | 就業規則(民事) / 就業規則の法的性質・意義・就業規則の成立 就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 労働時間・休日 |
裁判年月日 | : | 1992年7月24日 |
裁判所名 | : | 秋田地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成1年 (ワ) 178 |
裁判結果 | : | 棄却(控訴) |
出典 | : | 労働民例集43巻4号662頁/時報1432号29頁/タイムズ791号271頁/労経速報1467号3頁/労働判例616号100頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 唐津博・平成4年度重要判例解説〔ジュリスト臨時増刊1024〕229~231頁1993年6月/野田進・ジュリスト1033号118~121頁1993年11月1日/柳屋孝安・ジュリスト1017号91~94頁1993年2月15日 |
判決理由 | : | 〔就業規則-就業規則の法的性質〕 〔就業規則-就業規則の一方的不利益変更-労働時間〕 就業規則は労働者の労働条件を規律するものであるが、これは、使用者が、労働関係法規及び労働協約に反し得ないという制約を受けながらも、一方的に作成・変更するものであるから、作成・変更が労働者の既得の権利を奪うなど労働者の労働条件を不利益に変更するものである場合には、原則として、これに同意しない労働者に効力を及ぼすことはできず、作成・変更の内容が合理的なものであってはじめて、これに同意しない労働者にも就業規則を適用することができると解される。〔中略〕 本件就業規則の変更は、わが国における長時間労働を抜本的に是正すべく順次改正された銀行法及び同法施行令による銀行完全週休二日制の実施を契機として行なわれたものであるが、その内容は、土曜日をすべて休日とする代わりに年間約九五日にのぼる特定日を設定し、その日には所定労働時間を六〇分間延長したほかその他の平日についても一〇分間所定労働時間を延長するというもので、銀行完全週休二日制実施の目的からすると不徹底とのそしりを免れないものである。 しかしながら、前記のとおり、銀行完全週休二日制は、わが国の個別の銀行の経営の実情、労働者の意識の向上、それを反映した労使交渉の積み重ねにより実現したというよりも諸外国からの圧力によるところが大きいのであるから、個々の銀行がその規模、経営の実情に応じ、過渡的に労働時間の短縮幅を抑制することは是認せざるを得ないというべきところ、被告は前記認定の預金量の順位からすると相対的に競争力の低い銀行といわざるを得ず、人件費コスト増の圧縮を図ることも一応許容されてしかるべきである。 しかも、本件就業規則の変更により、原告らは土曜日がすべて休日となるほか、年間所定労働時間は四二時間一〇分短縮されるのであるから、原告らの被る不利益の程度も必ずしも大きいとはいえず、被告における経営上の必要性や被告における本件就業規則変更後の年間所定労働時間が全国の地方銀行の中でも最も短い方に属することなどの事情も考慮すると、本件就業規則変更による平日及び特定日の所定労働時間の延長は原告らにおいても受忍するのが相当な合理性のあるものといわざるを得ない。 |