全 情 報

ID番号 05946
事件名 公務外認定処分取消請求事件
いわゆる事件名 地公災基金東京都支部長(町田高校)事件
争点
事案概要  放課後(執務中)に高校教諭が心筋梗塞により死亡した場合につき、業務起因性は認められず公務災害にはあたらないとされた事例。
参照法条 地方公務員災害補償法26条
労働者災害補償保険法7条
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務起因性
労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 脳・心疾患等
裁判年月日 1991年3月22日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和62年 (行ウ) 135 
裁判結果 棄却
出典 時報1381号129頁/労働判例583号15頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕
〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-脳・心疾患等〕
Aは、死亡前日に至るまで、主にクラブ活動指導が超過勤務となる場合もあったが、各日午前八時過ぎから午後五時ころまでの範囲で比較的規則正しく職務を行っていたものであり、深夜勤、出張などはまったくないことを勘案すると、本件災害前の公務遂行が肉体的に回復困難なほどの疲労をもたらし、精神的に過激な緊張を強いるものであったとは認められない。そして、Aには前記認定のとおりの体質的素因等があり、冠動脈硬化の症状があったものと認められることから、当日の気温が一〇度を下まわる寒冷であったことを考え合わせても、Aの従事していた前記公務の遂行が、四月一六日の狭心症、一七日の心筋梗塞発症の相対的に有力な原因であったと認めることは困難である。
 なお、原告は、四月一六日朝の狭心症の発作の公務起因性についてひとまず措くとしても、右狭心症発作を起こしたのであるから、その後の業務の遂行は、Aにとって過重なものであり、その健康状態を急激に悪化させて、心筋梗塞を発症させたものであると主張する。しかしながら、診療医学的には、Aは狭心症発症後安静にしておくべきことが望ましかったとはいえるが、急性心筋梗塞の発症の原因は多様であって、肉体的労働が直結するものではなく、安静時等にも発症することが多く、狭心症発症後Aが従事した公務は強度の精神的疲労をもたらすものとはいえないこと、Aには心筋梗塞を発症のリスクファクターとなる前記体質的素因等があったこと等の前記認定からは、やはり公務の遂行と心筋梗塞発症との間には相当因果関係の存在を認めることはできない。