ID番号 | : | 05956 |
事件名 | : | 勤務不延長処分取消等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 摂津市職員事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 地方公務員たる定年延長者に対する勤務延長が認められなかったことにつき、地方公務員法二八条の三第一項による条例が存在しないとして、勤務不延長処分取消請求および損害賠償が棄却された例。 |
参照法条 | : | 地方公務員法28条の3第1項 国家賠償法1条 |
体系項目 | : | 退職 / 定年・再雇用 |
裁判年月日 | : | 1991年8月22日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成1年 (行ウ) 57 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働民例集42巻4号680頁/タイムズ783号134頁/労働判例595号47頁 |
審級関係 | : | 控訴審/大阪高/平 4. 6.25/平成3年(行コ)30号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔退職-定年・再雇用〕 一1 地公法二八条の三第一項及び本件条例四条一項によると、定年者の定年日後の勤務延長は、その退職により公務の運営に著しい支障が生ずる場合に限っていることが明らかである。 右は、昭和五六年法律第九二号による地公法改正により同法二八条の二ないし四を新設したことに伴い、自治事務次官は、同五六年一二月一一日、各知事・市長に対し、「地公法の一部を改正する法律の施行について(通知)」を発し、同法二八条の三第一項の勤務延長の具体例として「離島その他著しく不便な地に所在する病院、診療所等に勤務する医師等が退職する場合で後任の補充が得られないとき、職員が継続的な業務、研究に従事しており、職員の交替により業務、研究に著しい支障が生ずるとき」等、極めて例外的な場合に限定していること(〈証拠略〉)、自治省行政局長は、同五七年一〇月八日、各地方公共団体の長に対し「職員の定年等に関する条例(案)」を通知し、これに基づき、被告摂津市も本件条例を制定したが(争いがない)、同五九年六月二二日開会の摂津市議会において、当局は、本件条例四条一項は条項に合致する場合に例外的に活用する旨の趣旨説明及び共済年金資格を取得しない者に対する保障は今後の懸安事項である旨の答弁をなし、本件条例は可決されていること(〈証拠略〉)、そして、定年日後の勤務延長は、定年制本来の趣旨に反しない限度で、公務の適正、円滑な遂行のためにのみ許されるべきこと等に照らし、たやすく首肯できるのである(前記衆・参両院の付帯決議に法的拘束力はない)。 2 被告市長は、行政規則によっても、地公法二八条の三第一項及び本件条例四条一項を蝉脱することは、地方自治法一五条一項に違反し許されない。 本件要綱は、その法的性質はさておき、定年者の勤務延長を公務外の事由によって認めるものであり、地公法二八条の三第一項及び本件条例四条一項に違反するといわざるを得ない。 3 原告は、摂津市職員間に、本件要綱にそった勤務延長がなされるとの強い信頼が確立しており、本件処分は信頼保護の原則に反すると主張する。しかし、被告市長は、本件条例四条一項が定める場合以外に、定年者の勤務延長をなし得る何らの権限を有していないのであるから、原告が主張する信頼は法的保護に値しない事実上の期待に過ぎない。 4 よって、本件要綱を根拠とする原告の請求は、その余の点につき判断するまでもなく、失当である。 二 原告は、被告市長は前市長支持派の原告を排除する目的で恣意的、差別的に本件処分を行ったのであるから、本件処分は憲法一四条、地公法一三条に反し違法であると主張する。しかし、原告には、本件条例四条一項所定の勤務延長事由は存しないのであるから、結局、本件処分は正当といわざるを得ない。 |