ID番号 | : | 06015 |
事件名 | : | 障害等級認定処分取消等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 青梅労基署長(クニモト)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 作業中に左膝関節を捻挫した労働者が、捻挫した左膝関節部に残存する後遺障害についての障害等級の認定(一四級の九)を不当として、労基署長の不支給処分を争った事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法77条 労働者災害補償保険法15条 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 補償内容・保険給付 / 障害補償(給付) |
裁判年月日 | : | 1992年8月28日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成3年 (行ウ) 54 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例616号87頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-補償内容・保険給付-障害補償(給付)〕 原告は、左膝部に残存する疼痛等の神経症状により重量物を扱う作業などに従事することが困難となり、労働能力が大幅に低下したから、右神経症状は障害等級一二級の一二に該当すると主張するが、障害等級認定における労働能力は一般的平均的労働能力をいうのであって、被災労働者の職業能力的諸条件については障害の程度を決定する要素とはならないものと解されるところ、原告が本件事故当時従事していた大型盤板の運搬・加工作業は肉体的には一般的平均的労働能力を越えるかなりの重労働であるから、本件事故当時に従事していたような重量物を扱う仕事に従事できなくなったということだけでは、障害等級一二級の一二の「時には労働に差し支える程度の疼痛が起きるもの」に該当するということはできない。かえって、原告は、病状固定以前の昭和六〇年四月から約一年間、椅子に座っての作業ではあるがボール盤による加工作業に従事し、更に、病状固定後の平成二年三月から現在まではフライス工として左膝部の疼痛の影響を受けることなく稼働しているから(〈証拠略〉)、原告は、本件事故当時の様な重量物を扱う労働にこそ従事することが困難になったものの、病状固定後もそれまでと同様機械工としての仕事に従事してきたということができる。してみると、原告に残存する疼痛等の神経症状は、一般的平均的労働に差し支えるほどの態様、程度のものではないから、障害等級一二級の一二の「時には労働に差し支える程度の疼痛が起きるもの」には該当せず、せいぜい「労働には差し支えないが、受傷部位にはほとんど常時疼痛を残すもの」に準じるものとして(原告の疼痛は、階段の昇降時、重量物保持時などに発現するだけであり、「ほとんど常時疼痛を残すもの」にはあてはまらない。)、障害等級一四級の九に該当するにとどまる。したがって、原告の右主張も採用することができない。 3 以上によれば、原告の左膝部に残存する神経症状は、障害等級一四級の九の「局部に神経症状を残すもの」に該当するにとどまり、これを越えるものではないと認めるのが相当である。 四 原告の残存障害として左膝関節に機能障害が存在し、これが障害等級一二級の七(関節機能に障害を残すもの)に該当するか。 1 認定基準によれば、障害等級一二級の七に該当するというためには、関節の運動可能領域が健側の運動可能領域の四分の三以下に制限されていることを要するが、前記のいずれの医学的所見においても、原告の左膝関節の運動可能領域は全くの正常範囲であるというのであるから、そもそも障害等級一二級の七には該当しない。 なお、原告は、原告の左膝に残存する障害は認定基準の「通常の労働には固定装具の装着の必要がなく、重激な労働等に際してのみ必要ある程度のもの」と認められるから、「関節の機能に障害を残すもの」とみなされ、障害等級一二級の七に該当すると主張するが、右の認定基準は下肢の動揺関節ある場合の等級認定に関するものであり、原告の場合、左膝関節の動揺性の所見が見い出せないことからすれば、右認定基準を適用する余地はない。 |