ID番号 | : | 06029 |
事件名 | : | 懲戒処分取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 広島中央郵便局事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 深夜勤導入反対を目的として行われた構内座込み闘争を企画・指導した組合役員に対する減給等の懲戒処分の効力が争われた事例。 |
参照法条 | : | 国家公務員法82条1号 国家公務員法82条3号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動 |
裁判年月日 | : | 1992年9月24日 |
裁判所名 | : | 広島地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成1年 (行ウ) 16 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例619号42頁/労経速報1489号13頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕 公務員につき国家公務員法に定められた懲戒事由がある場合に、懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは、懲戒権者の裁量に任されていると解すべきであり、懲戒権者は、懲戒事由に該当すると認められる行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響等のほか、当該公務員の右行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等諸般の事情を考慮して、懲戒処分をすべきかどうか、また、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきかを決定することができるものと考えられる。そして、懲戒権者が右の裁量権の行使としてした懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法とならないものというべきである。 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕 これを本件についてみるに、本件座り込み闘争が深夜勤絶対反対の態度を堅持していた広島中央支部が、全逓本部が全国大会に深夜勤の条件付導入を提案するに及んで危機感を抱き、反対の意思を明確に表明し、これを当局等にアピールする必要があるとしてなされたものであることは、前記三認定のとおりであり、また、座り込み参加者は、全員勤務時間外の組合員であり、当局や利用者と格別トラブルが生じていないことは、前記二の3認定のとおりである。そして、掲示板前に掲出された横断幕により掲示物が見えないことがあったことを除き、本件座り込み闘争により広島中央局における本来の業務自体が直接かつ具象的に阻害されたと認めるに足りる確実な証拠はない。また、(証拠略)によると、減給処分を受けると、定期昇給、特別昇給、昇格の点でも不利益を受けることが認められる。しかし、一方、本件座り込み闘争の態様は、通行人の非常に多い幹線道路に面した広島中央局庁舎正面の利用者出入口脇のお客様周知用掲示板前の構内で、郵便局の執務時間中の午前九時頃から午後五時四〇分頃までにわたって、横断幕や全逓旗を掲出した上、二五名ないし六〇名の組合員が交替しながら集団で座り込み、原告らが座り込み参加者に対面して立ち、節目節目で携帯マイクを使用してあいさつをしたり、参加者がシュプレヒコールを行ったというものである。また、前記三の7認定のとおり、本件座り込み闘争は、労働組合の上部組織の統制に反して行われたものであり、広島支部以外に座り込み闘争を実施した組織はなかったことからすると、全逓内部においてもかかる闘争の必要性と相当性につき疑問視されていたことが窺われる。以上の各事実のほか、原告らの本件座り込み闘争における指導的役割、処分歴、組合における地位その他本件に現れた諸般の事情を総合考慮すると、原告伊達を減給三月俸給の月額の一〇分の一、その余の原告らを減給一月俸給の月額の一〇分の一に処した本件処分をもって社会観念上著しく妥当を欠くものとまではいえず、本件処分が懲戒権者である被告に任された裁量権の範囲を超えこれを濫用して行ったものであって、重過ぎるものと認めるのは困難である。 |