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ID番号 06043
事件名 損害賠償請求控訴事件
いわゆる事件名 奈良少年刑務所看守事件
争点
事案概要  刑務所の看取であった者が護身術訓練を行うに当たり実施した相撲により頭部を強打したことにより被った傷害につき国の安全配慮義務違反等を理由に損害賠償を請求した事例。
参照法条 民法415条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1992年10月30日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 平成3年 (ネ) 2391 
裁判結果 一部取消・棄却(上告)
出典 訟務月報39巻8号1419頁
審級関係 一審/奈良地/平 3.10.11/昭和61年(ワ)25号
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕
 奈良少年刑務所では、護身術指導担当者研修を終了し、かつ、矯正保護護身術術技検定規則に基づく護身術検定の上級(基本技術及び応用技に習熟し十分な応用能力をそなえ、かつ指導能力を体得した者)に合格した者の中から訓練指導担当者が任命されることになっていること、Aは昭和五五年八月に右研修を受けて右検定の上級に合格し、同年九月一日、奈良少年刑務所長から護身術訓練指導担当者に任命された者であることがそれぞれ認められ、また、〈証拠略〉によれば、訓練は月毎に作成される訓練計画表に基づいて実施され、所長はその原案をAに作成させていたが、同人の上司である警備隊長、補導課長、補導部長等を経て最終的に所長が決裁し、事後においても書面(日誌)による報告を受けて訓練の実施状況を把握することができるようになっていたこと、そのほか、適宜、補導課長等が訓練に立ち会っていたことがそれぞれ認められるので、所長が、護身術訓練をAひとりに任せきりにしてその指導監督を怠っていたということはできない。〔中略〕
 以上のとおりであるとすると、結局、本件事故について控訴人に安全配慮義務違反があったということはできず、また、Aにその職務の執行について過失があったということもできない。証拠によれば、本件事故により被控訴人快児が重い傷害を受け、重篤な後遺障害に苦しんでいることが窺われるけれども、控訴人に安全配慮義務の違反があることが認められず、Aの過失も肯認することができない以上、被控訴人らの本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも理由がないというよりほかはない。