ID番号 | : | 06052 |
事件名 | : | 解雇無効確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 西武バス事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 深夜酒気を帯びて、同僚の運転するバスを停めて二分間ほど待たせて乗車し、乗客から苦情を申し込まれるという事態を引き起こしたこと、同夜、酒気帯びのまま営業所に宿泊したことを理由としてなされたバス運転手に対する普通解雇の効力が争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 第三者得意先からの苦情 解雇(民事) / 解雇権の濫用 |
裁判年月日 | : | 1992年12月1日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成1年 (ワ) 16558 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労経速報1481号3頁/労働判例621号11頁 |
審級関係 | : | 控訴審/06285/東京高/平 6. 6.17/平成4年(ネ)4611号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-第三者得意先からの苦情〕 原告の行為は、バスの運行に支障をきたし、さらに乗客から苦情の申入れを受ける事態を起こしたのであって、これは、被告の信用を失墜させたばかりか、秩序を乱し、他の従業員にも悪影響を及ぼすもので、就業規則五三条一、四、五、八、一二、一三号所定の懲戒事由に該当するものということができる。上石神井営業所に宿泊した行為については、この種の行為に対する従前の被告の対応に照すと、これだけをもって原告を強く責めることは必ずしも妥当ではないというべきであるが、バス運行に支障を生じさせた原告の一連の本件行為は、従業員としての基本的な執務態度が不良であり、被告が原告を普通解雇にするにつきやむをえない事由があるというべきである。 〔解雇-解雇権の濫用〕 原告は、原告が本件バスに乗った目的、運行に与えた影響の程度、苦情を出した乗客の特異性、過去の処分事由を重く評価した就業規則違反、他と比較した処分の均衡等を指摘して、本件解雇が無効である旨主張する。 しかしながら、原告が本件バスに乗った目的が翌日の勤務に備えたものであったからといって本件行為を有利に評価できるものではなく、また、本件バスの遅延は僅かであって、しかも最終バスが度々遅れているからといって、前記認定のとおりの経緯のもとで、停留所以外の場所でバスを止めさせ、結果的にも三〇秒位も運行遅滞を生じさせたことであってみれば、本件解雇が合理性を欠くとは認め難いし、被告の従業員が飲酒の上で私用で「二分待ってくれ、連れがいるから。」という乗客無視の態度をとったことに遭い、バス運行の遅れを受けた乗客にすれば、苦情を申し出て当然であると考えられる。本件解雇は、懲戒解雇ではないから、原告主張のような就業規則五四条七号所定の制約があるわけではなく、原告の過去の処分歴からみれば、原告の運転に関する表彰が特に情状として考慮しなければならない事情にあるとはいえない。なお、(証拠略)によれば、被告における従業員の解雇事例が種々認められるが、他方、(証拠・人証略)によれば、原告は、本件解雇を不服として、労働協約六三条に基づき苦情処理を申し立てたが、平成元年七月二五日、二六日に開催された職場苦情処理委員会の審議を経て、同年八月四日、七日に開催された労使双方各四人で構成する中央苦情処理委員会において、解雇が相当であるとの決定がされ、その旨が原告に通知されたことが認められ、本件が他に比較して苛酷に過ぎると断ずる根拠はないというべきである。 したがって、本件解雇が解雇権濫用であること等を理由づける事実はない。 |