全 情 報

ID番号 06060
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 大陽鉄工事件
争点
事案概要  試用期間延長中の労働者に対して行われた、勤務態度不良等を理由とする解雇の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 名誉・信用失墜
労働契約(民事) / 試用期間 / 本採用拒否・解雇
裁判年月日 1992年12月21日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成2年 (ワ) 14252 
裁判結果 棄却
出典 労働判例623号29頁/労経速報1494号25頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-名誉・信用失墜〕
 被告は、平成二年一〇月二二日、原告に対し、【1】上司に反抗的で業務命令に従わない、【2】客先から応接態度について苦情があり、被告会社の信用、イメージが失墜し、受注減等の損失を被った、【3】平成二年八月二九日以降ほとんど出社せず、労働債務不履行があるなどと指摘し、被告就業規則五条二号、三五条二号、四号に該当する事由があるとして、同二九条一号により採用を取り消す旨の意思表示(以下「本件解雇の意思表示」という。)をし、解雇予告手当として二〇万六八五〇円を手交しようとしたが、原告がその受領を拒否したので、これを同月三〇日東京法務局に供託した。
〔解雇-解雇事由-名誉・信用失墜〕
〔労働契約-試用期間-本採用拒否・解雇〕
 被告社内においてA所長はいわゆる人物として評価されている立場にあったことが認められ、また、当裁判所における尋問に際しての供述態度や供述内容等をみても、A所長が少なくとも極く普通の良識人であり、管理職としての考え方に欠けるところは見いだすことができないばかりか、原告が主張するとおりの経過を想定してみたところで、A所長の対応の仕方が原告の前記最終的態度を正当化するものとみることは困難である。原告訴訟代理人は、あたかも若年の新卒者の採用時と同様に、原告に対しても社会的言動の当否、妥当性について逐一初歩から教え込むべきだったという考えを前提として主張をしているかのようであるが、被告が中途採用者のとくに三〇歳を超えた者に対する処遇として、即戦力という捉え方をしたことをもって不当とする根拠はない。無断欠勤の点についても、それだけで解雇事由として十分かどうかを措くとしても、少なくとも所定の手続をとらずに休むことが失当であることも多言を要しないところであり、これが原告の前記態度を正当化するものでないことは当然である。そうすると、本件解雇をもって解雇権の濫用というべき特段の事情は何も認めることができず、要するに、原告の態度は、社会人としては余りに甘え過ぎといわざるを得ない。
 よって、その余の点について判断するまでもなく、本件解雇は有効であるというほかはない。