ID番号 | : | 06062 |
事件名 | : | 従業員地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 大池市場協同組合事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 職場離脱、職務放棄、不正行為等を理由として普通解雇されたスーパーマーケットの店長に対する解雇の効力が争われ、その中で労働者の年休の請求につき使用者に時季変更権行使の理由があったか否かが問題とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法39条4項 労働基準法89条1項3号 |
体系項目 | : | 年休(民事) / 時季変更権 解雇(民事) / 解雇事由 / 業務命令違反 解雇(民事) / 解雇事由 / 不正行為 |
裁判年月日 | : | 1992年12月21日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成3年 (ワ) 4961 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働判例624号289頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔年休-時季変更権〕 〔解雇-解雇事由-業務命令違反〕 使用者は、労働者が年次有給休暇の時季指定をしたときは、事業の正常な運営を妨げる事由が存在し、かつ、これを理由として使用者が時季変更権を行使しない限り、労働者の指定によって年次有給休暇が成立し、当該労働日における就労義務は消滅する。そして、労基法が、使用者に対し、できるだけ労働者が指定した時季に休暇を取れるよう状況に応じた配慮をすることを要請していることからすると、仮に業務の運営にとって不可欠な者が年次有給休暇の指定を行った場合であっても、使用者が代替要因確保の努力をしないまま直ちに時季変更権を行使することは許されないものと解するのが相当である。 これを本件についてみるに、本件店舗における店長の職務は後記三1で認定するとおりであり、被告代表者本人によると、店長職を代行する立場にあり現にこれを行っていたのは被告代表者一人であることは認めてよい。しかし、それまでの原告の職場離脱により被告が蒙った業務上の支障が前記1で認定した程度であったこと、被告代表者本人によっても、当日原告が休暇を取ったにもかかわらず被告の業務に具体的支障はなかったと認められることからすると、そもそも、原告が当日の被告の業務の運営にとって不可欠な者であったとは認められない。のみならず、右店長の職務が、一日の年次有給休暇の指定に対処するため代替要員を確保することが困難な職務であるとは到底いい難いにもかかわらず、被告が、原告が行った時季指定の後代替要員を確保すべく努力をしたと認めるに足りる証拠はない。とすると、被告の行った時季変更権の行使は無効であるから、原告には平成三年三月二二日の就労義務はないものというべきであり、同日の職務放棄が解雇事由になるとの被告の主張は失当である。 〔解雇-解雇事由-不正行為〕 原告は、平成元年二月二一日、妻が本件店舗で買い物をした際レジスターを不正に操作したこと、被告はこれに対し、店長手当の半額の減給処分をしたこと、しかし、反省の情を認めてこれを六ケ月に短縮したこと、右処分時に誓約書(〈証拠略〉)の提出を求めたが原告はこれを提出しなかったこと、その後誓約書の問題は有耶無耶になったことが認められる。 2 右事実によると、原告の不正行為は店長たる立場に鑑みその責任は極めて重いというべきである。しかし、被告は、これを理由に前記減給処分を行っているのであり、右事由をそれから二年以上も経過した本件解雇の事由とすることは、本件解雇が懲戒解雇の実質を有するものであることからすると、同一の事由につき再度その責任を追及し、原告に二重の不利益を蒙らせることになり許されないものと解するのが相当である。したがって、原告の不正行為を解雇事由とする被告の主張もまた失当である。 |