ID番号 | : | 06068 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | サカイ引越センター事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | トラック運転手が、荷物運送中に居眠り運転により交通事故を引き起こして死亡した事件に関連して、トラック運転手の遺族が会社に対して安全配慮義務違反を理由として損害賠償を請求した事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法623条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任 |
裁判年月日 | : | 1993年1月28日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成1年 (ワ) 4240 平成1年 (ワ) 7434 |
裁判結果 | : | 一部認容・棄却 |
出典 | : | タイムズ831号175頁/労経速報1488号15頁/労働判例627号24頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕 (二) 以上によれば、被告らには、従業員を運転手として使用するに当たり、自動車の運転という高度な注意義務の要求される業務を中心的な業務内容とするものであるから、運転手がかかる注意義務に応じた集中力を維持した上で業務に従事できるよう就労環境を整えるべき注意義務を負っていたものというべきところ、Aが本件事故当日である昭和六一年三月二日までの二四日間連続して出勤し、その間に、二日間にわたって一つの引越運送に当たる場合以外は、毎日、自動車運転及び引越の業務を行い、帰庫した時間が明らかな一七日間について限定しても、出庫から帰庫まで平均して一一時間弱程度稼働し、拘束時間はそれ以上であったばかりか、本件事故当日の一週間においては、運転総距離は二三〇〇キロメートル以上であり、同年二月二三日には名古屋まで、同月二五日から二六日にかけては富山県まで、同月二八日には名古屋まで引越運送業務を行い、富山県行きの場合を除いた五日間には、出庫から帰庫まで一一時間から一四時間弱程度の日が続いたこと、運転手の業務内容は、運転にとどまらず、引越荷物の梱包、運搬、積み降ろし、顧客との対応、代金の収納、通常三名程度付けられる助手への指示等を含んでいたから、通常、一日に二件程度の引越運送をこなしていたAは、肉体的、精神的にも、相当程度に負担のかかる立場にあったものと思われること等からすれば、Aは、本件事故当日の同年三月二日には非常に疲労を蓄積した状態にあったものと推認されるところ、同日にも、通常と同様、四トンロングトラックを運転して、午前中に一件の引越運送を行い、さらにその後、当日に指示を受けた埼玉県までの引越荷物の梱包積み込みを行ったものであり、同引越荷物には比較的神経を使うものと思われるピアノを含んでおり、また、荷主はいわゆるうるさいお客であったというのであるから、同積み込み作業終了後は、肉体的にも精神的にも相当疲労したものと推認されるが、Aは特に休息を取ることもなく、同日夜には埼玉県に向けて出発しており、その途中に居眠り運転に至ったのであるから、被告らには、前記注意義務違反があることは極めて明らかであるものといわなければならない。 そして、以上によれば、Aは、慢性的な疲労状態にあったところ、本件事故当日の勤務による疲労が重なり、居眠り運転をするに至ったものというべきである。 (三) したがって、本件事故は被告らの右注意義務違反によるものというべきであるから、被告らは、本件事故による損害を賠償すべき責任がある。 |