全 情 報

ID番号 06083
事件名 休業補償支給決定処分取消請求事件
いわゆる事件名 地公災基金東京都支部長(荏原四中)事件
争点
事案概要  公務災害の認定をうけた原告が、休業補償給付の平均給与日額の算定を不服として処分取消を認めたケースにつき、違法事由はないとして請求が棄却された事例。
参照法条 地方公務員災害補償法28条
体系項目 労災補償・労災保険 / 補償内容・保険給付 / 休業補償(給付)
裁判年月日 1986年12月5日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和59年 (行ウ) 144 
裁判結果 棄却
出典 労働判例490号47頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-補償内容・保険給付-休業補償(給付)〕
 三 平均給与額及び休業補償額の算定について
 (証拠略)及び弁論の全趣旨を総合すると、原告は、公務災害の療養のために、昭和五七年一一月一日から同月三〇日までの間に一三日間、また同年一二月一日から三一日までの間に一一日間休業したこと、原告の同年一一月、一二月当時の給与は、給料一五万一七三六円、調整手当一万三六五六円、義務教育特別手当七六〇〇円、通勤手当二万一九〇〇円合計一九万四八九二円であったこと、ところが、原告は右のとおり休業したため、職員の給与に関する条例二〇条により、原告の同年一一月分の給与から、給料七万五八六八円、調整手当六八二八円、義務教育特別手当三八〇〇円、通勤手当一万九五〇円合計九万七四四六円を、また同年一二月分の給与から、給料六万四一九六円、調整手当五七七八円、義務教育特別手当三二一六円、通勤手当九二六六円合計八万二四五六円減額されたこと、原告の昭和五七年二月から四月までの給与が被告の主張2(一)(2)のとおりであり、被告が本件各処分にあたり法二条四項本文に基づいて被告の主張2(一)(2)のとおり平均給与額、休業補償額を算出したことが認められる。
 ところで、原告は、被告が法二条四項により平均給与額を算出したことについて、本件各処分については、法二条四項本文によるべきではなく、法施行規則三条三項、あるいは法二条七項によるべきである旨主張するのでこの点について判断するに、まず法施行規則三条三項は、法二条四項によって得られた平均給与額が、同施行規則三条二項によって計算して得られた金額に満たないときは同項によるべき旨定めているところ、同項によって算出される平均給与額は、給料一五万一七三六円に調整手当一万三六五六円を加えた額を三〇で除した五五一三円七銭、したがって五五一四円となるのであって、法二条四項本文によって計算して得られた平均給与額より低額であること明らかであり、また東京都職員の公務災害補償等に伴う付加給付に関する条例附則(昭和五八年条例一一八号)四項の付加給与を受給するために便宜的に法施行規則三条三項によって計算することも許されないから、結局本件において、法施行規則三条三項によって平均給与額を算定すべき余地はない。次に法二条七項の適用について検討するに、本件各処分が算定の基礎にした平均給与額は原告の期待に添うものではないとしても、それ自体不当に低額であるとはいえないこと、右条例附則四項による付加給付の受給は、基金による休業補償とは別個の制度による支給であって、そのような条例による受給の有無を考慮しないことが本件において直ちに公正を欠くとはいえないこと、また仮に、A校長らが原告主張の如く休業により原告の収入が減ずることはない旨話したとしても、そのことが直ちに本件各処分の採った平均給与額が公正を欠くとはいえず、しかも後記のとおり右発言は被告の責任に影響を及ぼすことはないことからすれば、いまだ法二条四項本文によって平均給与額を算出したことが、法二条七項にいう「公正を欠くと認められる場合」に該当するものということはできない。
 次いで、原告は昭和五七年二月から同年四月までの間に中学校進路指導対策費、出張手当の支給を受けており、これらは法二条五項にいう特殊勤務手当に該当するところ、被告はこれら手当等を平均給与額算出の際の計算に入れていない違法がある旨主張するが、特殊勤務手当については学校職員の給与に関する条例一五条一項によりその支給要件として、(1)多学年学級を有する学校に勤務する教育職員には、多学年学級担当手当、(2)舎監勤務に従事する職員には舎監手当、(3)右(1)(2)のほか、著しく危険、不快、不健康又は困難な勤務その他著しく特殊な勤務で給与上特別の考慮を必要とし、かつその特殊性を給料で考慮することが適当でないと認められるものに従事する職員にはこれに必要な手当を支給する旨規定され、右中学校進路指導対策費や出張手当が右条例にいう特殊勤務手当に該当しないこと明らかであって、原告の主張は理由がない。