ID番号 | : | 06091 |
事件名 | : | 昇給賃金等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本運送事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 昇給について、労働協約にもとづく賃金規則の改訂によって行なってきた場合につき、労働協約改訂が成立しないときは前年度の賃金規則に定める本給表による昇給をすべきであり、その間の差額が支払われなければならないとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働組合法16条 労働基準法2章 労働基準法89条1項3号 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額 |
裁判年月日 | : | 1987年4月30日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和61年 (ワ) 5512 |
裁判結果 | : | 一部認容 |
出典 | : | 労経速報1293号13頁/労働判例497号61頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金-賃金請求権と考課査定・昇給昇格・賃金の減額〕 1 原告らは旧賃金規則の適用があると主張し、被告は旧賃金規則は新賃金規則の制定により失効したが、原告らが所属しているA労組との間に新賃金規則の内容に見合う協約を成立するに至っていないので、原告らに対して新賃金規則の適用を凍結して旧賃金規則を暫定的に適用していると主張するのであるが、そうすると、昭和六一年三月一六日以降も原告らに旧賃金規則を適用することについては当事者間に合意が成立している、少なくとも本件訴訟において右適用につき当事者間に争いがないというべきである。 2 ただし、被告は旧賃金規則別表1「本給表」は昭和六一年三月一五日をもって失効し、その後原告ら(A労組)との間に本給表の内容について合意(協約)が成立していないのであるから、原告らには未だ具体的昇給請求権は成立していないと主張するので検討する。 成立に争いがない(証拠略)によると、被告の賃金規則第一条は「この規則は、就業規則および労働協約の定めに基づき、従業員の賃金に関する基準およびその運営に関することを定める。」と規定してあるところ、被告は毎年四月ころ締結される労働組合との労働協約に基づき(昭和五七年以降は毎年三月一六日付けをもって)同規則を改正してきたことが認められる。そして昭和六一年度においては、原告らA労組との間に右労働協約の成立を見ないまま経過しているので、原告らに対しては旧賃金規則の「本給表」に基づいてその後の賃金を支払っていること、他方日運労との間には右労働協約を締結し旧賃金規則を改正して新賃金規則を制定実施していることはいずれも当事者間に争いがない。 右事実によると、被告は、原告らA労組と締結した乙一四協約を解約して新賃金規則を原告らに適用実施する旨(新賃金規則が旧賃金規則よりも不利益であってその合理性につき争いがある場合は右合理性を証明する必要がある)表明しないかぎり、原告らは、乙一四協約に基づく旧賃金規則をその別表1「本給表」を含めて適用を受けるものと解され、したがって、同規則第一三条に基づき具体的昇給請求権を有するものというべきである。被告会社は、乙一四協約の定期昇給に関する規定は昭和六〇年度の経過により失効した旨主張するが、その具体的な根拠の主張立証がなくこれを認めることができない。 三 最後に、原告らの請求金額について検討する。 原告らは昭和六一年四月分から口頭弁論終結時に賃金の支払い期限の到来した昭和六二年一月分までの一〇か月分の実労働時間による定期昇給額及びそのはね返り残業手当額を請求しうることはいうまでもないところであり、その額は、前一項判示の1ないし7事実(5の合計額から6、7の金額を控除)により算出され、別紙一〇・認容債権目録記載の通りとなる。 原告らは、同年二月分以降のいわゆる将来分についても請求をするが、その将来分を現時点で算定するについては前一項6、7判示の通り不確定な要素があることや各原告の請求金額の多寡などを考慮するとき、右請求については、実労働時間に基づき算定される確定金額につき被告の任意の履行に期待するのが相当と思料する。 |