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ID番号 06109
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 龍神タクシー(異議)事件
争点
事案概要  タクシー運転手の雇止めにつき、期間を一年として雇用されたものであり、期間満了により契約は終了したとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法21条
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1990年5月1日
裁判所名 和歌山地田辺支
裁判形式 決定
事件番号 平成2年 (ヨ) 5 
裁判結果 却下
出典 労働判例581号43頁
審級関係 控訴審/06115/大阪高/平 2.10. 8/平成2年(ラ)201号
評釈論文
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 2 右事実及び前示争いのない事実によれば、申請人は、Aタクシーに、期間を一年として雇用されたことは明らかであって、他の臨時雇の運転手の雇用契約が例外なく更新されてきているからといって、申請人の本件契約が期間の定めのないものであるといえないことは当然のことである。
 よって、本件雇用契約は、一年の期間の定めのあるものということになる。
 二 本件雇止めの効力。
 1 前示したように、他の臨時雇の運転手の場合、期間満了の都度新契約を締結していたものであって、その中には、期間の満了と契約の更新との間に時間的なずれが見受けられる事例はあるものの、これが常態であったとまではいえないから、本件雇用契約においても、一年の期間満了とともに当然に雇用関係が消滅したというべきである。
 2 そのうえ、本件にあっては、Aタクシーにおいて、申請人に対し雇止めの意思表示までしているのであるから、いずれにしろ、本件雇用関係は期間満了により消滅したものといわざるをえない。
 3 もっとも、期間の定めのある契約であっても、就労の期間、更新の回数や形態等によっては、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態にあったと評価されて、解雇に関する法理が雇止めに類推適用される場合がありうるけれども、本件にあっては、申請人の就労の期間は一年にすぎず、過去に更新が一度もなされていないのであるから、解雇に関する法理を類推適用する余地はない。
 4 ただ、解雇に関する法理の類推適用がない場合であっても、雇止めが不当労働行為を構成したり、新契約を締結しないという不作為が権利の濫用に当たるとされる場合がないわけではないが、その場合であっても、損害賠償等の請求をなしうることは格別、申請人とAタクシーとの間に新たな雇用契約が締結されたことになるわけではないから、本件のような地位保全、賃金仮払の仮処分申請においては、この点に関する申請人の主張は意味のない主張といわざるをえず、判断の限りでない。