全 情 報

ID番号 06114
事件名 退職金請求事件
いわゆる事件名 関西給食事件
争点
事案概要  株主会において、取締役に対する退職功労金を支給することを前提に取締役会に一任した場合につき、取締役会の決議をまってはじめて請求権が発生するとされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項3の2号
商法269条
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 退職慰労金
裁判年月日 1990年8月8日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成2年 (ワ) 1273 
裁判結果 棄却
出典 労働判例572号111頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-退職金-退職慰労金〕
 本件のように、株主総会において、退職する取締役に対し功労金を支給することを前提にその取り扱いを取締役会に一任する旨の決議がなされた場合には、取締役会は、株主総会ひいては会社に対し、右決議の趣旨に従い、遅滞なく退任する取締役に対する退職功労金の支給額を決定する義務を負うものというべきである。しかしながら、株主総会が退職功労金の取り扱いすなわちその具体額の決定を取締役会に一任したものである以上、当該取締役の退職功労金請求権は、取締役会の支給決議を待って始めて発生するものと解するのが相当であるから、取締役会がその額を定めることを怠っている場合あるいは有効な支給額の決議をしない場合であっても、取締役が会社に対する善良な管理者としての義務違反の責任を問われることは別として、本件の原告のような当該退任取締役個人が、右決議の不存在あるいは無効を理由として、会社たる被告に対し、支給基準に従って算定した額の給付を求める請求をすることはできないものといわざるを得ない(なお、右取締役会の義務があくまで会社に対するものであって、退任取締役個人に対するものではないことからすると、当該退任取締役個人が、会社に対し、退職功労金の額を決定して支給すべき旨を請求することもまた困難であると解せられる。)。してみると、原告の前記主張は、それ自体失当というべきである。