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ID番号 06121
事件名 不当労働行為救済命令取消請求控訴事件
いわゆる事件名 兵庫県衛生研究所事件
争点
事案概要  県衛生研究所に日々雇用されてきた者に対する更新拒否が不当労働行為にあたらないとした救済命令の取消請求を棄却した原判決が維持された事例。
参照法条 地方公務員法22条2項
労働組合法7条1号
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1991年3月15日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 平成2年 (行コ) 2 
裁判結果 棄却
出典 高裁民集44巻1号20頁/時報1395号155頁/タイムズ758号182頁/労働判例589号85頁
審級関係 上告審/最高三小/平 3.12. 3/平成3年(行ツ)140号
評釈論文 草野芳郎・平成3年度主要民事判例解説〔判例タイムズ臨時増刊790〕310~311頁1992年9月
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 五 次に、控訴人は、当初、兵庫県衛生研究所細菌部に期限付で任用(採用)されたとしても、その後、控訴人が、その職務に習熟し、正規の職員と全く同様の業務をしており、かつ、日々、反復期限を更新して任用(採用)されたことにより、期限の定めのない一般職の職員に転化したと主張する。
 しかし、法律により雇用の要件が法定されていない一私企業の従業員を雇用する場合とは異なり、期限の定めのない一般職の地方公務員の任用は、地方公務員法一七条ないし二一条に基づき、競争試験又は選考による厳格な手続に従ってこれを行うことを要するところ、前記二に認定した通り、兵庫県では、期限の定めのない一般職の職員の任用については、右法律の定めた手続きにより、県知事がその任命をするのに対し、日々雇用職員の任用は、兵庫県衛生研究所等地方機関の長が、その委任を受けた権限に基づき、競争試験又は選考による厳格な手続によらずして任命するものであるし、また、期限の定めのない一般職の職員と日々雇用職員に適用される服務規定や健康保険も異なるのである。したがって、期限の定めのない一般職の職員の任用行為と、控訴人のように日々雇用職員の任用行為とは、その性質を全く異にする別個の任用行為であり、また、右任用後の賃金、服務規定や社会保険の適用その他に関する具体的勤務条件も全く異なるのであるから、法律上定められた競争試験又は選考による厳格な手続きに従って、期限の定めのない一般職の職員に任用する旨の任命権者(県知事)による任命行為がない限り、控訴人が、その職務に習熟し、兵庫県衛生研究所に、日々雇用職員として、如何に長期間に亘り更新されて継続的に雇用されてきたとしても、日々雇用の職員であるという身分の性質が、期限の定めのない一般職の職員の身分に転化するものではない(名古屋高裁金沢支部昭和五四年三月一六日判決・訟務月報二五巻七号一七五〇頁、東京高裁昭和五八年一二月二一日判決・労民集三五巻一号一頁等参照)。控訴人が、兵庫県の期限の定めのない一般職の職員となるためには、地方公務員法一七条ないし二一条の規定に基づき、競争試験または選考により、兵庫県知事の任命行為が必要であると解すべきであり、このことは、地方公務員法五七条の職員となるについても同様に解すべきである(ちなみに、最高裁判所昭和四九年七月二二日判決・民集二八巻九二七頁は、私企業に雇用された臨時工に関する事案であって本件に適切ではない)。