ID番号 | : | 06122 |
事件名 | : | 不当労働行為救済命令取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 文英堂京都本社事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 始業時から一五分のミニストの反覆に対抗し、スト終了後に組合員の就労を拒否したことにつき、スト後の労働が無意味、無価値になるとは認められないとして、就労拒否、賃金カットを不当労働行為とした救済命令が維持された事例。 |
参照法条 | : | 民法413条 民法536条2項 労働組合法7条1号 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 就労拒否(業務命令拒否)と賃金請求権 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 争議行為・組合活動と賃金請求権 |
裁判年月日 | : | 1991年11月13日 |
裁判所名 | : | 京都地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成2年 (行ウ) 26 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例604号61頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 野川忍・ジュリスト1028号206~209頁1993年8月1日 |
判決理由 | : | 〔賃金-賃金請求権の発生-就労拒否(業務命令拒否)と賃金請求権〕 〔賃金-賃金請求権の発生-争議行為・組合活動と賃金請求権〕 争議行為とは、労働者の集団が、団交の経過の中で、その主張の貫徹を目的として、労働力を集団的に利用させないこと等の手段により、使用者の事業経営を阻害し、使用者に経済的圧力をかける行為である。そして、前記のとおり、このような行為が国法上適法とされる以上(労組法八条等)、使用者としては、争議行為から通常生じうる経済的圧力や損失を受忍するほかないのであって、これに対する積極的な物理的報復手段に出て争議行為を妨げることができないのが原則である。 もっとも、労使紛争の諸事情に照らし、争議行為によって労使間の勢力の均衡が破れる程に使用者側が著しく不利な圧力を受ける場合には、衡平の見地から、労使間の勢力の均衡を回復するための対抗手段として、例外的に使用者側の争議行為としてロックアウト(労務の受領の集団的拒否)も相当として許容される余地がある(最高裁第三小法廷昭和五〇年四月二五日判決、民集二九巻四号四八一頁参照。) しかしながら、前記認定のとおり、本件スト当日の状況を見る限り、参加人はごく普通の時限スト及び指名ストを実行しただけであり、しかも、スト参加者もスト終了後直ちに就労を申し出ており(本件スト後の就労が無意味でないことは既に説示したとおりである。)、本件ストにより原告の当日の業務に著しい打撃が加えられたとは認められない。また、本件ストに至るまでのミニ・ストの頻発化等による原告の損害を見ても、ストとストとの間に提供される労務がほとんど無意味になるとか頻発するストのため業務再開にその都度多大の経費と時間を伴うなど、使用者にとって成果の乏しい労働力が提供されるに過ぎないのに賃金負担を免れないために、使用者の負担が受忍できない程度に加重となっているとは認められない。その他、原告主張の争議行為による損失というのは、主観的・抽象的な損失に留まる面が大きく、本件スト当時、原告がスト参加者を職場から締め出さなければならない具体的危険性や緊急性が存在していたとの事実の指摘に欠くものである。 以上要するに、参加人の一連の争議行為によって原告が受けたと見られる経済的圧力や損失はいずれも争議行為により通常生じる程度のものであり、原告がそれ以上に経済的圧力又は損失を受けていたとの特別の事情は何ら認められないのである。にもかかわらず、本件スト終了後の労務提供を無意味なものとみなしてスト参加者を職場から締め出そうとし、本件賃金カットまで行った原告の姿勢は、単なる防衛的なものという以上に功撃的な色彩を帯びているといわなければならない。 |